不動産投資を続けているなかで、「金利が上がったら毎月の返済はどうなるの?」「今のうちに何か手を打つべき?」と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。日本銀行によると、2026年6月時点で短期政策金利の誘導目標は0.5%程度とされており(日本銀行 https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2026/kk260626a.pdf)、変動型ローンを利用している投資家にとって、金利上昇は他人事ではなくなっています。この記事では、金利上昇が不動産投資のキャッシュフローに与える影響をシミュレーションで確認しながら、借換えや固定化、繰上返済といった具体的な対策をわかりやすく解説します。返済計画の見直しや専門家への相談を検討している方にも、判断の材料となる情報をお届けします。
金利上昇が不動産投資のキャッシュフローを直撃する仕組み

まず押さえておきたいのは、金利上昇が投資収益に与える影響の大きさです。表面利回りが高く見えても、金利が上がれば手元に残るお金は想像以上に少なくなることがあります。
不動産投資では「表面利回り」という言葉がよく使われますが、実際の収益力を測るには「返済後利回り」を確認することが重要です。たとえば、年間賃料240万円・投資額3,000万円・経費60万円・年間返済160万円という条件では、返済後利回りが大幅に低下するという試算があります(LIFULL HOME’S https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_02009/)。表面利回りだけを見て物件を選ぶと、金利が少し上がっただけで収支が赤字に転落するリスクがあるのです。
さらに具体的なシミュレーションを見てみましょう。LIFULL HOME’Sの試算によると、残高や残存期間、変動型のモデルで金利が上昇すると、年間の手残りが大幅に減少するとされています(LIFULL HOME’S https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_02009/)。金利が1〜2%上昇するだけでキャッシュフローが大幅に縮小し得るという事実は、変動型ローンを利用しているすべての投資家が認識しておくべきポイントです。
また、変動型ローンには「返済額は5年ごとに見直し、前回の1.25倍を上限とする」というルールを設けている金融機関もあります。しかし、このルールがあるからといって安心はできません。イオン銀行の例では、2026年5月1日に投資用マンションローンの基準金利が2.870%から3.220%へ0.350%引き上げられており(イオン銀行 https://www.aeonbank.co.jp/news/2026/0501_01/)、返済額の上限ルールがあっても未払い利息が積み上がるリスクは残ります。金利上昇局面では、ルールの存在に安心するのではなく、実際の収支への影響を定期的に確認する姿勢が大切です。
返済計画を見直す前に知っておきたい3つの対策

金利上昇への実務的な打ち手は大きく3つに整理できます。「借換えで金利を下げる」「固定金利に切り替える」「繰上返済で残高を減らす」という方向性です(LIFULL HOME’S https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_02009/)。それぞれにメリットと注意点があるため、自分の状況に合った選択をすることが重要です。
借換えは、現在より低い金利の金融機関へローンを移すことで月々の返済負担を軽減する方法です。ただし、借換えを実行する前には必ず違約金(繰上返済手数料)を確認してください。たとえば足利銀行のアパートローンでは、全額繰上返済の手数料が固定期間中は「残高×0.5%×残存固定月数÷12」、変動金利の場合は55,000円と定められています(足利銀行 https://www.ashikagabank.co.jp/tesuryo/loan_tesuryo.html)。また、AGビジネスサポートの不動産投資ローンでは期限前返済元本に2〜5%の違約金が設定されています(AGビジネスサポート https://www.aiful-bf.co.jp/products/mortgage_loan/investment.html)。借換えによるコスト削減効果が違約金を上回るかどうか、事前にしっかり計算することが欠かせません。
固定金利への切り替えは、将来の金利上昇リスクを遮断できる点で魅力的な選択肢です。三井住友信託銀行のアパートローンでは、変動コースのほか固定3年・5年・10年・15年・20年・30年と幅広い固定期間が用意されています(三井住友信託銀行 https://www.smtb.jp/personal/loan/rates)。一方、三井住友銀行のアパートローンは2022年4月1日現在で固定金利特約型が「ご利用いただけません」とされており(三井住友銀行 https://www.smbc.co.jp/kojin/apartment/)、すべての金融機関で固定化が選べるわけではありません。現在の借入先で固定化できない場合は、他行への借換えも視野に入れる必要があります。
繰上返済は、手元資金を使って元本を減らすことで将来の利息負担を軽くする方法です。金利が上昇している局面では、元本残高が少ないほど金利上昇の影響を受けにくくなります。ただし、繰上返済に充てる資金は修繕費や空室期間の運転資金としても必要なため、手元に一定の余裕資金を残したうえで実行することが大切です。
金融機関ごとの商品特性を理解して借換えを検討する
借換えを検討する際は、各金融機関の商品特性を正確に把握することが重要です。金利水準だけでなく、融資条件や手数料体系も含めて総合的に比較する必要があります。
銀行系のアパートローンは一般的に金利が低めですが、審査基準が厳しく、物件の立地や築年数、借入人の属性によって条件が大きく変わります。三井住友信託銀行のアパートローンは借入上限3億円・期間35年以内(原則法定耐用年数内)という条件で、賃貸用不動産の建築・購入から借換えまで幅広く対応しています(三井住友信託銀行 https://www.smtb.jp/personal/loan/apartment)。一方、オリックス銀行の投資用不動産ローンは2026年7月1日現在で新規取扱を中止しており(オリックス銀行 https://www.orixbank.co.jp/personal/interest/house.html)、過去の比較記事をそのまま参考にすることは危険です。金融機関の状況は変化するため、必ず最新情報を確認してください。
ノンバンク系のローンは、銀行で融資を受けにくい案件の受け皿として機能することがあります。AGビジネスサポートの不動産投資ローンは固定・変動とも2.49〜7.99%・融資額100万〜5億円・最長30年という幅広い条件を持ちます(AGビジネスサポート https://www.aiful-bf.co.jp/products/mortgage_loan/investment.html)。セゾンファンデックスの不動産投資ローンは2026年5月時点で団信なし4.4〜5.2%・団信あり4.9〜5.8%・返済期間5〜30年となっています(セゾンファンデックス https://www.fundex.co.jp/personal/investment/)。ノンバンク系は審査の柔軟性がある反面、金利水準は銀行より高めになる傾向があるため、借換えコストとのバランスを慎重に検討することが必要です。
また、住宅金融支援機構のフラット35は全期間固定で金利上昇リスクを完全に排除できる商品ですが、投資用物件の取得資金には利用できません(住宅金融支援機構 https://www.flat35.com/loan/lineup/flat35/conditions/index.html)。「賃貸用物件をフラット35で借換えたい」という発想は残念ながら実現できないため、注意が必要です。
税務の観点から金利上昇対策を考える
金利上昇対策を考えるうえで、税務の知識も欠かせません。金利が上がれば支払利息が増えますが、税務上の扱いを正しく理解することで、対策の方向性が変わることがあります。
不動産所得では、賃貸している建物等の取得のための借入金利子は必要経費として計上できます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/pdf/019.pdf)。つまり、金利上昇によって増えた支払利息は経費として税負担を軽減する効果があります。しかし、元本返済部分は必要経費にはなりません。金利が上がっても元本返済の重さは変わらないため、「利息が増えれば節税になる」という考え方だけで対策を怠ることは危険です。
また、土地等を取得するための負債利子相当の赤字部分は損益通算できないとされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm)。「金利が上がって赤字になっても他の所得と相殺できる」という期待は、土地取得に関わる部分では成立しない場合があります。税務上の扱いは個別の状況によって異なるため、具体的な判断は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
一方、家賃の見直しという選択肢も存在します。借地借家法では、税負担の増減・価格の上昇または低下・経済事情の変動・近傍同種との比較において不相当となった場合、将来に向かって借賃の増減を請求できると定められています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090)。ただし、実際に家賃を引き上げるには入居者との交渉が必要であり、空室リスクとのバランスを慎重に考える必要があります。
専門家への相談で返済計画をより確実なものにする
金利上昇対策は、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることで、より精度の高い返済計画を立てることができます。不動産投資に関わる専門家には、ファイナンシャルプランナー、税理士、不動産会社、そして金融機関の担当者など複数の選択肢があります。
ファイナンシャルプランナーや不動産投資の専門家に相談する際は、現在の借入条件・物件の収支状況・手元資金の状況を整理したうえで臨むと、具体的なアドバイスを得やすくなります。特に借換えを検討している場合は、複数の金融機関に打診して条件を比較することが重要です。ただし、金融機関ごとに審査基準や融資姿勢が異なり、支店や提携ルートによっても条件が変わることがあるため、公式サイトの情報だけでなく直接問い合わせることをおすすめします。
シミュレーションを行う際は、楽観的なシナリオだけでなく、金利がさらに上昇した場合や空室が続いた場合など、厳しい条件でも収支が成り立つかどうかを確認することが大切です。現在の金利環境を踏まえると、変動型ローンを利用している場合は少なくとも金利が1〜2%上昇したケースを想定したシミュレーションを行い、その結果をもとに対策の優先順位を決めることが現実的な対応といえます。
まとめ
金利上昇局面において不動産投資を安定させるためには、まず返済後利回りで現状の収益力を正確に把握することが出発点です。そのうえで、借換え・固定化・繰上返済という3つの対策を自分の状況に合わせて組み合わせることが重要になります。借換えを検討する際は違約金の計算を忘れずに、固定化を選ぶ際は金融機関ごとの商品特性を確認してください。また、税務上の扱いや家賃改定の可能性も視野に入れながら、総合的な返済計画を立てることが長期的な安定につながります。一人で判断が難しいと感じたら、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家に相談することを積極的に検討してみてください。金利上昇は脅威ですが、正しい知識と早めの行動で、リスクを大きく軽減することができます。
参考文献・出典
- 日本銀行 — https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2026/kk260626a.pdf
- LIFULL HOME’S — https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_02009/
- 三井住友銀行 — https://www.smbc.co.jp/kojin/apartment/
- 三井住友信託銀行(アパートローン) — https://www.smtb.jp/personal/loan/apartment
- 三井住友信託銀行(金利一覧) — https://www.smtb.jp/personal/loan/rates
- AGビジネスサポート — https://www.aiful-bf.co.jp/products/mortgage_loan/investment.html
- セゾンファンデックス — https://www.fundex.co.jp/personal/investment/
- イオン銀行 — https://www.aeonbank.co.jp/news/2026/0501_01/
- オリックス銀行 — https://www.orixbank.co.jp/personal/interest/house.html
- 住宅金融支援機構(フラット35) — https://www.flat35.com/loan/lineup/flat35/conditions/index.html
- 国税庁(収支内訳書の書き方) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/pdf/019.pdf
- 国税庁(必要経費の知識) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
- e-Gov法令検索(借地借家法) — https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- 足利銀行 — https://www.ashikagabank.co.jp/tesuryo/loan_tesuryo.html