不動産投資を始めようとしているとき、「毎月の返済額はいくらになるのか」「本当に収益が出るのか」という不安を感じる方は多いのではないでしょうか。こうした疑問を解消するために役立つのが、ローン返済シミュレーションです。実は、エクセルを使えば無料で精度の高いシミュレーションを自作できますし、無料テンプレートを活用すれば初心者でも手軽に始められます。この記事では、エクセルを使った不動産投資のローン返済シミュレーションの基本から、実際に使える無料ツールの紹介、さらに金融機関ごとのローン条件の比較まで、わかりやすく解説します。
エクセルでローン返済シミュレーションを作る基本

まず押さえておきたいのは、エクセルには返済額を自動計算してくれる「PMT関数」という便利な機能があるという点です。この関数を使えば、借入金額・金利・返済期間を入力するだけで、毎月の返済額を瞬時に算出できます。専門的な知識がなくても、関数の使い方さえ覚えれば誰でも活用できるのが大きな魅力です。
PMT関数の基本的な使い方は、Microsoftの公式サポートページ(support.microsoft.com)で詳しく解説されています。たとえば年利4%のローンを月払いで返済する場合、利率には「4%÷12」を、期間には「返済年数×12」を入力するのが基本です。このように年利を月次に換算することで、正確な月々の返済額が計算できます。
ただし、PMT関数で計算できるのは元金と利息の合計額だけです。実際の不動産投資ローンには、事務手数料・保証料・火災保険料・固定資産税といった諸費用も発生します。これらはPMT関数では自動計算されないため、別の列や別シートに分けて管理する必要があります(Microsoft サポート)。シミュレーションの精度を高めるためにも、諸費用の欄を必ず設けておきましょう。
返済方法には大きく分けて「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類があります。元利均等返済は毎月の返済額が一定で家計管理がしやすい一方、元金均等返済は返済が進むにつれて利息が減り、総返済額を抑えられるという特徴があります。どちらの方式を選ぶかによってシミュレーションの組み方も変わるため、自分の投資スタイルに合った方式を選ぶことが重要です。
無料で使えるエクセルテンプレートの活用法

エクセルを一から作るのが難しいと感じる方には、無料テンプレートの活用がおすすめです。Microsoftが提供する「住宅ローン計算シート」は、金額・金利・ローン期間・ボーナス返済などを入力するだけで返済額を自動計算してくれます。さらに、目標返済期間を入力すると毎月の返済額を逆算してくれる「逆シミュレーション機能」も備わっており、資金計画を立てる際に非常に役立ちます(Microsoft テンプレートギャラリー)。
また、ビジネス書類のテンプレートサイトであるbizocean(bizocean.jp)では、Excel形式で無料ダウンロードできる「借入返済予定表」が公開されています。借入額・返済額・残高を入力するだけで返済状況を一覧で管理できるため、複数の物件を持つ投資家にも使いやすい設計になっています。同サイトには元金均等返済方式に対応した固定金利版テンプレートもあり、借入金額を入力するだけで返済額・元金分・利息分・残高が自動計算される仕様です。返済回数や年率も自分の計画に合わせて変更できるため、汎用性が高いといえます。
さらに、事業として不動産賃貸業を営む方や法人化を検討している方には、日本政策金融公庫(jfc.go.jp)が提供する「返済シミュレーション(事業資金用)」も活用できます。このシミュレーターは元金均等返済と元利均等返済の両方を試算できるため、融資を受ける前の返済比較に役立ちます。初期の事業計画を立てる段階で、複数の返済パターンを比較検討するのに適したツールです。
テンプレートを選ぶ際は、自分の投資規模や管理したい項目に合ったものを選ぶことが大切です。シンプルな1物件管理には基本的な返済予定表で十分ですが、複数物件を持つ場合は空室率や管理費・修繕費なども一緒に管理できるシートを自作または改良することを検討してみてください。
不動産投資ローンの金利と条件を比較する
シミュレーションを正確に行うためには、実際のローン条件を把握しておく必要があります。金融機関によって金利・融資期間・手数料が大きく異なるため、複数の条件をエクセルに入力して比較することが重要です。
たとえばオリックス銀行(orixbank.co.jp)の不動産投資ローンは、2026年8月3日現在、借入額2,000万円以上2億円以内・借入期間1年以上35年以内の変動金利型で、店頭表示金利は年4.425%となっています。事務手数料は借入金額の2.20%以内で、繰上返済を行う場合は借入後1年以内で2.00%、1年超3年以内で1.50%、3年超5年以内で1.00%、5年超で0.50%の解約金が発生します。団信(団体信用生命保険)の保険料は銀行負担ですが、選ぶ団信の種類によっては金利が上乗せされる場合があります。
一方、住宅金融支援機構(jhf.go.jp)の賃貸住宅建設融資は、35年固定金利または15年固定金利の2タイプがあり、繰上返済制限制度の利用有無によって合計4通りの金利タイプから選べます。2026年8月申込分の借入金利は2026年10月下旬に決定される仕組みです。子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資では、当初一定期間の金利引下げがあり、複数の金利タイプから選択でき、返済期間は最長40年です。また、融資手数料・返済方法変更手数料・繰上返済手数料がかからない点も特徴で、エクセルの返済表を作成する際に手数料列をシンプルにできるケースがあります。
東京スター銀行(tokyostarbank.co.jp)の投資用借り換えローンは、新規購入には使えず借り換え専用の商品です。融資金額は100万円以上・融資期間は1年以上30年以内で、事務手数料は融資金額の2.2%〜3.3%となっています。公式サイトのシミュレーション例では、借入金額3,000万円・30年・年2.20%の条件で月々113,910円という試算が示されています。このような公式シミュレーション例をエクセルに転記して、自分の条件と比較するのも有効な方法です。
事業資金として活用できる公的融資とシミュレーション
不動産賃貸業を事業として行う場合、民間銀行だけでなく公的機関の融資も選択肢に入れることができます。日本政策金融公庫(jfc.go.jp)の国民生活事業では、一定の要件を満たす不動産賃貸業が「企業活力強化資金」の対象となります。日本政策金融公庫によると、この資金の融資限度額や返済期間は資金使途等によって異なります。
金利については、日本政策金融公庫の公表利率は時点・資金区分で変動します。確認できた最新公表では、国民生活事業の基準利率は年3.50〜5.20%でした。民間銀行の不動産投資ローンと比較すると金利帯が異なるため、エクセルのシミュレーションシートに両者の条件を並べて比較することで、どちらが自分の事業計画に合っているかを判断しやすくなります。
公的融資を活用する際は、事業計画書の作成が求められることが一般的です。その際にも、エクセルで作成した返済シミュレーションは非常に役立ちます。月々の返済額・利息総額・残高推移を一覧で示せるシートがあれば、金融機関への説明資料としても活用できます。返済シミュレーションは単なる計算ツールではなく、投資判断や融資交渉の場でも力を発揮するものだと理解しておきましょう。
シミュレーションを活かした収支計画の立て方
ローン返済額を把握したら、次は収支全体のシミュレーションへと発展させることが大切です。不動産投資の収益性を正確に判断するためには、家賃収入からローン返済額・管理費・修繕費・税金などを差し引いた「キャッシュフロー(手元に残るお金)」を計算する必要があります。
エクセルでキャッシュフローを管理する際は、楽観的なシナリオだけでなく、空室が発生した場合や金利が上昇した場合のシナリオも作成することをおすすめします。たとえば変動金利型のローンを選んだ場合、将来的に金利が上昇すれば返済額が増加します。PMT関数を使えば、金利の数値を変えるだけで複数のシナリオを瞬時に比較できるため、リスク管理にも活用できます。
また、繰上返済を検討する際にも、エクセルシミュレーションは有効です。繰上返済を行うと元金が減り、その後の利息負担が軽くなります。一方で、金融機関によっては繰上返済手数料が発生するため、手数料を差し引いてもメリットがあるかどうかをシミュレーションで確認することが重要です。オリックス銀行の例では、借入後5年超の繰上返済手数料は0.50%となっており、こうした数値もエクセルに組み込んで総合的に判断することができます。
収支シミュレーションは一度作れば終わりではなく、定期的に見直すことが大切です。家賃相場の変動・金利の動向・修繕費の発生など、実際の状況に合わせてシートを更新していくことで、長期的な資産形成の道筋を常に把握できるようになります。
まとめ
不動産投資のローン返済シミュレーションは、エクセルを使えば無料で始められます。PMT関数を活用した自作シートや、MicrosoftやbizoceanのテンプレートをうまくAを活用することで、初心者でも精度の高い返済計画を立てることが可能です。また、日本政策金融公庫や住宅金融支援機構などの公的機関が提供するシミュレーターも、事業計画の初期段階で大いに役立ちます。
重要なのは、返済額の計算だけで満足せず、空室リスクや金利上昇といった悪条件も想定したキャッシュフロー全体のシミュレーションを行うことです。エクセルのシートを定期的に更新しながら、実態に即した収支管理を続けることが、長期的な不動産投資の成功につながります。まずは無料テンプレートをダウンロードして、自分の条件を入力するところから始めてみてください。一歩踏み出すことが、安定した資産形成への第一歩となります。
参考文献・出典
- Microsoft テンプレートギャラリー(住宅ローン計算シート) — https://www.microsoft.com/ja-jp/office-pipc-template/result.aspx?id=13891
- Microsoft サポート(PMT関数) — https://support.microsoft.com/ja-JP/Excel/pmt-function
- bizocean(借入返済予定表) — https://www.bizocean.jp/doc/detail/109377/
- bizocean(返済計画書・元金均等返済方式&固定金利版) — https://www.bizocean.jp/doc/detail/548347/
- 日本政策金融公庫(返済シミュレーション・事業資金用) — https://www.jfc.go.jp/n/finance/simulation.html
- 日本政策金融公庫(国民生活事業のご案内2025) — https://www.jfc.go.jp/n/company/national/pdf/goannai_2025.pdf
- 日本政策金融公庫(金利情報) — https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html
- 住宅金融支援機構(賃貸住宅融資金利) — https://www.jhf.go.jp/kinri/chintai.html
- 住宅金融支援機構(賃貸住宅建設融資 金利決定のお知らせ) — https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_2.pdf
- オリックス銀行(不動産投資ローン 商品説明書) — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/account.html
- オリックス銀行(金利一覧) — https://www.orixbank.co.jp/personal/interest/
- 東京スター銀行(投資用借り換えローン) — https://www.tokyostarbank.co.jp/products/loan/mortgage_collateral/investment_refinance.html
- 西日本シティ銀行(NCB不動産オーナーズローン) — https://www.ncbank.co.jp/loan/housing/realestate-owners/