不整形地の購入や売却を検討しているとき、「普通の土地と同じ契約書でいいのだろうか」と不安に感じる方は多いのではないでしょうか。実は、形状が複雑な土地には境界の確定や面積の精算など、通常の整形地とは異なる注意点がいくつも存在します。売買契約書に適切な特約を盛り込んでおかないと、引き渡し後にトラブルが発生するリスクが高まります。この記事では、不整形地の売買契約書に必要な特約の種類や書き方のポイントを、初心者にも分かりやすく解説します。境界の問題から面積精算の方法まで、契約前に知っておきたい知識をまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。
不整形地とは何か、なぜ特約が必要なのか

まず押さえておきたいのは、不整形地の定義と、それが売買契約においてなぜ特別な扱いを必要とするかという点です。不整形地とは、正方形や長方形ではなく、三角形・L字形・旗竿形(敷地延長)など、形状が整っていない土地のことを指します。こうした土地は、整形地と比べて境界の特定が難しく、隣地との関係も複雑になりやすい特徴があります。
不整形地の売買では、境界の確定や面積の計算が通常よりも手間のかかる作業になります。形状が複雑なぶん、隣地との境界線が曖昧になりやすく、測量の結果が登記簿上の面積と大きく異なるケースも珍しくありません。こうした問題を放置したまま契約を進めると、引き渡し後に「思っていた面積と違う」「隣地との境界でもめた」といったトラブルに発展することがあります。
そこで重要になるのが、売買契約書に盛り込む「特約条項」です。不動産売買では、交渉によって決まった約束事を売買契約書の特約条項に記載します(全日本不動産協会の解説より)。特約は売主と買主の双方が合意した内容を明文化するものであり、後々のトラブルを防ぐための重要な安全装置といえます。不整形地の場合は特に、境界・測量・面積精算に関する特約を丁寧に設けることが大切です。
境界確定に関する特約の基本

不整形地の売買契約書において、最も重要な特約のひとつが境界確定に関するものです。境界が未確定のまま売買を進めると、隣地との紛争や越境問題に発展するリスクがあります。実際に、対象地と隣地との境界について見解の相違があるケースでは、境界をめぐる法的紛争に発展し、境界が想定と異なる位置に判断された場合には地積に影響が生じ、越境等の問題に発展することもあるとされています(三井住友トラスト不動産の解説より)。
こうしたリスクを防ぐために、売買契約書では「売主が全ての隣地所有者から境界確認を得た確定測量図を、残代金決済前までに買主に交付する」という特約を設けることが一般的です。確定測量図とは、隣地所有者の立会いのもとで境界を確認し、測量士または土地家屋調査士が作成した図面のことです。この書類があることで、境界の位置が公的に確認されたことになります。
土地売買契約の標準的な例では、売主が引き渡しまでに現地で境界を明示し、隣地所有者の立会いを得て実測図を作成・交付するとされています(全国宅地建物取引業協会連合会の契約書例より)。また、確定測量図の作成費用は売主が負担するとする契約例も多く見られます(八戸市の土地売買契約書案より)。不整形地は境界点が多くなりがちなため、こうした費用負担の取り決めを事前に明確にしておくことが特に重要です。
さらに、宅地建物取引業者は境界確定の状況について現地の杭(境界標)を確認したり、売主に対して境界の明示や越境の有無について記載した物件状況等確認書(告知書)の提出を求めるなどの方法で調査を行い、その結果を重要事項説明で正確に説明する義務があるとされています(埼玉県のFAQより)。地積測量図や売主作成の測量図があっても、それだけで境界確定を意味しない点にも注意が必要です。
確定測量図が交付できない場合の特約
実際の取引では、隣地所有者の協力が得られず、期限までに確定測量図を用意できないケースも起こり得ます。こうした事態に備えて、契約書に「確定測量図が交付できない場合の取り扱い」を明記しておくことが大切です。
特約の記載例としては、「売主は〇年〇月〇日までに確定測量図を作成し買主に交付するものとするが、隣地所有者の協力が得られない等、売主の責めに帰さない事由により期限までに交付できない場合には、本契約は当然白紙になるものとする」という形式が用いられることがあります(不動産売買契約書の特約条項に関する解説より)。この場合、手付金が返還されることも合わせて明記し、買主が損害賠償等を請求しないとする文言が加えられるのが一般的です。
一方で、特約において確定測量図の交付義務が売主に定められた場合、その義務が売買契約の目的達成に必須といえるときは、売主がその義務を履行しないと買主は売買契約を解除できると考えられています(三井住友トラスト不動産の解説より)。つまり、特約の内容によって買主の権利の範囲が変わるため、文言の設計は慎重に行う必要があります。
また、境界を明示せず現況のまま引き渡すことを買主が承諾する特約例もあります。その場合は「買主は、売主において境界の明示を行わず現況での引き渡しとなることを了承した」という文言とともに、境界非明示に起因する不利益について買主が売主に法的請求をしないとする内容が盛り込まれます(不動産売買契約書の特約条項に関する解説より)。このような特約は買主にとってリスクが高いため、内容を十分に理解したうえで合意することが求められます。
面積精算(実測精算)に関する特約
不整形地の売買では、登記簿上の面積と実際の測量結果が異なることが少なくありません。そのため、売買代金の計算方法として「実測精算」を採用するか「登記簿面積固定」とするかを、契約書に明確に定めておく必要があります。
実測精算とは、測量によって確定した実測面積をもとに売買代金を再計算する方式です。土地売買契約では、実測の結果、実測面積と登記簿記載の面積との間に差異が生じた場合の取り扱いについて、契約書に定めておくことが重要です。例えば、売主が地積更正登記の責を負わないとする条項が置かれることがあります。この条項は、面積の差異が生じた場合でも登記の修正義務は売主にないことを明確にするものです。
一方、複数の地番にまたがる土地の場合は、特定の地番だけに実測精算の規定を適用し、他の地番は登記記録上の地積で固定して、実測差異があっても代金変更や請求をしないとする特約例も存在します(売買契約書解説書の改訂内容対照表より)。不整形地は複数の筆にまたがっているケースもあるため、こうした地番ごとの取り扱いを丁寧に定めることが重要です。
重要なのは、実測精算か登記簿面積固定かを曖昧にしたまま契約を締結しないことです。どちらの方式を採用するかによって、最終的な売買代金が変わる可能性があります。また、実測精算を採用する場合は、精算の基準となる単価(1平方メートルあたりの金額)も契約書に明記しておくと、後々の計算でトラブルが生じにくくなります。
重要事項説明書と特約条項の関係
売買契約書の特約条項と混同されやすいものに、重要事項説明書の「特記事項」があります。この二つは似た名前ですが、役割が異なります。特記事項は重要事項説明書において不動産の契約内容不適合に関与する事実を記載するものであり、一方、交渉によって決まった約束事は売買契約書の特約条項に記載するとされています(全日本不動産協会の解説より)。
不整形地の場合、重要事項説明書の特記事項には、境界の確定状況や越境の有無、測量図の有無といった物件の現状に関する情報が記載されます。これに対して、売買契約書の特約条項には、確定測量図の交付期限や費用負担、面積精算の方法など、売主と買主が交渉のうえで合意した取り決めが記載されます。両者は補完し合う関係にあり、どちらも丁寧に確認することが大切です。
また、大阪府の宅地建物取引業法に関する解説では、宅建業法第35条以外の「重要な事項」として、境界に関する情報なども説明対象となり得ることが示されています(大阪府の公式資料より)。不整形地の取引では、こうした説明義務の範囲が広くなる傾向があるため、仲介業者に対して疑問点を積極的に質問し、納得したうえで契約を進めることをおすすめします。
まとめ
不整形地の売買契約書では、境界確定・確定測量図の交付・面積精算・交付できない場合の取り扱いなど、通常の整形地よりも多くの特約を丁寧に設けることが重要です。特約は売主と買主の双方を守るための約束事であり、曖昧なまま契約を進めることが後々のトラブルにつながります。
まず、仲介業者や司法書士・土地家屋調査士などの専門家に相談しながら、物件の状況に合った特約の内容を検討することをおすすめします。境界の状況や測量の有無によって必要な特約は異なるため、一般的な雛形をそのまま使うのではなく、個別の事情に応じた内容にカスタマイズすることが大切です。不整形地の取引は複雑に見えますが、適切な特約を備えた契約書を作成することで、安心して売買を進めることができます。ぜひ専門家の力を借りながら、納得のいく取引を実現してください。
参考文献・出典
- 全日本不動産協会 月刊誌 – https://magazine.zennichi.or.jp/research/12387
- 三井住友トラスト不動産 不動産売買のトラブル(確定測量図の交付義務) – https://smtrc.jp/useful/knowledge/jyuyojiko/2025_08.html
- 大阪府 宅地建物取引業法第35条以外の「重要な事項」の例(売買) – https://www.pref.osaka.lg.jp/o130200/kenshin/jusetsu/juyo-baibai.html
- 埼玉県 宅地建物取引業法FAQ(令和7年12月1日現在) – https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/208895/r7faqgozyuonn.pdf
- 全国宅地建物取引業協会連合会 土地・建物売買契約書(土地実測売買) – https://www.fudousan.or.jp/kiso/buy/images/pdf/9_2_keiyaku.pdf
- 八戸市建設部建築指導課 土地売買契約書(案) – https://www.hachinohe-kenshin.jp/file/landsale/03.%E5%9C%9F%E5%9C%B0%E5%A3%B2%E8%B2%B7%E5%A5%91%E7%B4%84%E6%9B%B8%EF%BC%88%E6%A1%88%EF%BC%89.pdf
- 不動産流通経営協会 売買契約書解説書2021/3改訂内容対照表 – https://frk-print.com/images/companies/1/pages/baikei_taisyo_20210204.pdf
- レキオウィング 不動産売買契約書の「特約条項」とは?その役割と書き方を解説します – https://lequio-wing.co.jp/media/special-clauses/