相続・空き家

遺産分割協議で不動産を売る5つの手順と税金の注意点

この記事の結論

  • 遺産分割協議書を作成し、相続登記を済ませてから売却手続きに進むのが正しい順序です。
  • 相続登記は遺産分割成立から3年以内の申請が法律で義務付けられています(法務省)。
  • 売却益には譲渡所得税がかかりますが、相続税額を取得費に加算できる特例があります(国税庁)。

親が亡くなり、実家をどうするか決めなければならない。そんな状況に突然置かれた方は少なくありません。「売りたいけれど、何から始めればいいのかわからない」「兄弟と話し合いがまとまらない」「税金はどのくらいかかるのか」といった不安を抱えながら検索している方も多いはずです。この記事では、遺産分割協議から不動産売却までの手順を、法律や税金の知識がなくても理解できるよう順を追って説明します。費用や税金についても具体的に触れていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

まず「あなたはどのケースか」を確認する

まず「あなたはどのケースか」を確認するのイメージ

相続した不動産をどうするかは、大きく3つに分かれます。「そのまま住み続ける」「賃貸に出す」「売却する」の3択です。この記事は「売却する」を選んだ方、または売却を検討している方に向けて書いています。

売却を選ぶ理由はさまざまです。相続人が複数いて現物のまま分けられない、維持費や固定資産税の負担が重い、誰も住む予定がないといったケースが多く見られます。いずれの場合も、売却の前に必ず「遺産分割協議」という話し合いを経る必要があります。これは相続人全員で「誰が何を受け取るか」を決める手続きで、不動産の売却もこの協議の中で決めることになります。

ここまでのまとめ: 相続不動産を売るには、まず相続人全員での遺産分割協議が必要です。

お持ちのマンションは、いま売るといくらか 無料のAI査定で確かめる

遺産分割協議から売却までの5つの手順

遺産分割協議から売却までの5つの手順のイメージ

実際の流れを順番に確認しましょう。大きく分けると5つのステップになります。

第一のステップは「相続人の確定」です。誰が相続人になるかを戸籍謄本などで確認します。配偶者や子ども、場合によっては兄弟姉妹が相続人になります。相続人の中に未成年者がいる場合は注意が必要です。法務省の情報によると、未成年者がいる場合は家庭裁判所で「特別代理人」(みなさんに代わって手続きを行う人)の選任を受けなければならないケースがあり、その特別代理人が未成年者に代わって遺産分割協議を行います。

第二のステップは「遺産分割協議と協議書の作成」です。相続人全員で話し合い、不動産を売却してその代金を分ける「換価分割(かんかぶんかつ)」という方法を選ぶことが一般的です。換価分割とは、不動産を第三者に売却して、その売却益を相続人で分ける方法です(裁判所「遺産分割ハンドブック」)。話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名・押印します。

第三のステップは「相続登記」です。遺産分割協議書ができたら、不動産の名義を相続人に変える手続きを法務局で行います。遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記を申請することが法律で義務付けられています(法務省)。この登記が完了して初めて、その不動産を売ることができます。登記を怠ると過料(罰金のようなもの)が科される可能性もあるため、早めに進めることをおすすめします。

第四のステップは「不動産会社への依頼と売買契約」です。相続登記が完了したら、不動産会社に売却の依頼をします。媒介契約(不動産会社に売却活動を依頼する契約)は、登記上の所有者名義で結ぶのが基本です。複数の相続人が共有名義になっている場合は、全員の合意のもとで進める必要があります。

第五のステップは「売却代金の分配」です。売却が完了したら、遺産分割協議書で決めた割合に従って代金を分配します。この際、各相続人がそれぞれ確定申告を行う必要があります。

ここまでのまとめ: 相続人確定→協議書作成→相続登記→売買契約→代金分配の順で進めます。

話し合いがまとまらないときの選択肢

相続人の間で意見が割れることは珍しくありません。「売りたい人」と「売りたくない人」が対立するケースも多くあります。

話し合いがどうしてもまとまらない場合は、家庭裁判所の「調停手続」を利用できます。裁判所の情報によると、相続財産の範囲や権利関係に争いがあり、当事者間での話し合いがまとまらないときや話し合いができないときに、この調停手続を利用することができます。調停では中立な調停委員が間に入り、話し合いを助けてくれます。

調停でも合意できない場合は「審判」という手続きに移ります。裁判所の「遺産分割ハンドブック」によると、売却方法については調停で当事者全員が合意すれば任意売却(通常の不動産売却)が可能で、合意できない場合は審判で競売を命じる方法があります。競売は一般的に市場価格より低い金額になりやすいため、できれば調停での合意を目指すほうが得策です。

共有状態のまま放置すると、将来の売却がさらに難しくなるリスクがあります。相続人が亡くなってその子どもたちが相続すると、関係者がどんどん増えていくからです。早めに話し合いを進めることが、全員にとって利益になります。

ここまでのまとめ: まとまらない場合は家庭裁判所の調停を活用でき、合意できなければ審判・競売という流れになります。

売却にかかる費用と税金の基本

不動産を売るときにかかる費用と税金は、事前に把握しておくことが大切です。

費用面では、まず不動産会社への「仲介手数料」があります。一般的には売却価格の3%+6万円(税別)が上限とされています。たとえば2,000万円で売れた場合、仲介手数料は約72万円(税別)になります。そのほか、相続登記にかかる登録免許税や司法書士への報酬、売買契約書に貼る印紙代なども必要です。

税金については、売却益(譲渡所得)に対して譲渡所得税がかかります。重要なのは「取得費」の計算方法です。国税庁の情報によると、相続で取得した土地・建物を売った場合の取得費は、被相続人(亡くなった方)がその不動産を買ったときの購入代金や手数料をもとに計算します。つまり、親が昔に安く買った土地でも、その当時の購入価格が取得費になります。

また、取得時期についても知っておきたいポイントがあります。国税庁によると、相続で取得した不動産の取得時期は、被相続人の取得時期をそのまま引き継ぎます。これにより、所有期間が5年を超えるかどうかで「長期譲渡所得」か「短期譲渡所得」かが決まり、税率が変わります。

さらに、相続税を支払った方には有利な特例があります。国税庁(No.3267)によると、相続で取得した財産を一定期間内に譲渡した場合、支払った相続税額のうち一定金額を取得費に加算できる特例があります。要件の一つは、相続開始翌日から相続税の申告期限翌日以後3年を経過する日までに譲渡することです。この特例を使うと課税される利益が減り、税負担を抑えられます。

また、被相続人が住んでいた空き家を売る場合には「相続空き家の特例」も存在します(国税庁 No.3306)。この特例を使う場合は、確定申告書に登記事項証明書や被相続人居住用家屋等確認書などの書類を添付して提出する必要があります。特例の適用要件は複数あるため、税理士に相談することをおすすめします。

ここまでのまとめ: 仲介手数料・登記費用・譲渡所得税が主なコストで、相続税の取得費加算特例や空き家特例で税負担を減らせる場合があります。

まとめ

遺産分割協議から不動産売却までの流れを整理すると、「相続人の確定→遺産分割協議・協議書作成→相続登記(3年以内の義務)→売買契約→代金分配・確定申告」という5つのステップになります。話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の調停という選択肢もあります。税金については、取得費の計算方法や相続税の取得費加算特例など、知っているかどうかで手取り額が大きく変わる場合があります。手続きは複雑に見えますが、一つひとつ順番に進めれば必ず完了できます。不安な点は司法書士・税理士・不動産会社に早めに相談することが、スムーズな売却への近道です。

ご自身の物件がいくらになるかは、実際の成約データで見るのが早道です。

参考文献・出典

  • 法務省:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~ — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00435
  • 法務省:相続登記の申請義務化について — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
  • 国税庁:No.4202 相続税の申告のために必要な準備 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4202.htm
  • 裁判所:遺産分割ハンドブック(広島家庭裁判所) — https://www.courts.go.jp/hiroshima/vc-files/hiroshima/kasai/kaji/isanbunkatsu/isanbunkatsu-handbook.pdf
  • 裁判所:遺産に関する紛争調整調停 — https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_24/index.html
  • 国税庁:No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
  • 国税庁:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
  • 国税庁:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国土交通省:相続等により取得した土地の売却に関する事例集 — https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001755812.pdf
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

プロフィール詳細 →
詳しいガイド相続後の売却でつまずく点遺産分割協議書の作成と相続登記を済ませたあとも、名義の扱いや共有名義での合意、期限つきの特例など、実際に売り出す段になって初めて気づく点がいくつか残っている。売却ガイド一覧を見る →

関連記事

TOP
不動産売買なら青山地所