相続・空き家

杉並区に空き家バンクはある?無料相談窓口の使い方を解説

杉並区で空き家を抱えていて、「売るべきか、貸すべきか、それとも自分で使うべきか」と迷いながら、何から手をつければいいかわからないまま時間が過ぎてしまう方は少なくありません。多くの方が「空き家バンク」という言葉を手がかりに情報を探しますが、杉並区の場合は少し事情が異なります。この記事では、杉並区が実際に用意している空き家の相談・活用の仕組みを、初心者にもわかりやすく整理して解説します。読み終えるころには、自分がまずどの窓口に問い合わせればよいかが明確になっているはずです。

杉並区に「空き家バンク」はある?まず知っておきたいこと

結論から言うと、杉並区には物件情報を一覧掲載する専用の「空き家バンク」という名称のサービスはありません。一般的に空き家バンクとは、空き家の売買・賃貸情報をウェブ上に掲載し、希望者とマッチングする自治体の仕組みを指します。しかし杉並区では、それに近い役割を「空家等利活用相談窓口」と「空き家のマッチング支援」という2つの制度が担っています。物件掲載型のバンクを想像していると混乱しやすいので、まずこの点を押さえておくことが大切です。

杉並区では、空き家問題全般に関する区役所の窓口を住宅課に一元化しています(杉並区公式ホームページ)。空き家を所有している方はもちろん、近隣の空き家に困っている方も、住宅課空家対策係に問い合わせれば適切な制度へ案内してもらえます。連絡先は杉並区役所の代表電話である03-3312-2111で、受付時間は祝日を除く平日の午前8時30分から午後5時までです。どの制度を使えばよいかわからないときは、この住宅課がすべての入口になると考えておくとよいでしょう。

なぜ杉並区がこれほど空き家対策に力を入れているのか、その背景には空き家の増加があります。令和7年3月に公表された空き家実態調査によると、区内の空き家件数は1,321件で、前回調査の748件から大きく増えました(杉並区公式資料)。空き家比率も0.69ポイントから1.18ポイントへ上昇しています。町別に見ると和泉が86件と最も多く、次いで堀ノ内74件、久我山68件と続きます。空き家比率が最も高かったのは大宮で2.45ポイントに達しており、区全体として対策を強化する必然性がうかがえます。

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中心となる「空家等利活用相談窓口」とは

杉並区で空き家の活用を考えるとき、最初に頼るべき入口が「杉並区空家等利活用相談窓口」です。これは区が民間事業者と協働して実施している無料の相談窓口で、空き家の利活用を専門とするノウハウを持った担当者が対応してくれます(杉並区公式ホームページ)。名称に「バンク」とは付いていませんが、空き家をどうするか悩んでいる所有者にとって、実質的な相談の中心となる制度です。

この窓口では、空き家に関する幅広いテーマを相談できます。地域交流の場や住宅確保要配慮者(高齢者・障害者・低所得者など、住まいの確保に特別な配慮が必要な方)の住まいとして活用したいという相談から、リフォームして自宅や賃貸物件として使いたい、解体・売却を検討している、相続を円滑に進めたいといった悩みまで対応しています(杉並区公式ホームページ)。単に情報を紹介するだけでなく、所有者の事情に寄り添って解決策を一緒に考えてくれる点が特徴です。

相談できる対象者の範囲は思いのほか広くなっています。区内にある空き家や、空き家となるおそれがある建物を所有している方はもちろん、区内在住であれば区外の空き家を所有している場合でも相談可能です。さらに親族や代理人も対象に含まれるため、高齢の親が持つ空き家について子どもが代わりに相談することもできます。マンションなど集合住宅の空き室も対象になっている点は、戸建てだけでなく分譲マンションを抱える方にとっても心強いポイントです(杉並区公式ホームページ)。

相談日時は午前8時30分から午後5時30分までで、水曜日・日曜日、夏季休業、年末年始などを除いて利用できます。申し込みは電話(03-5397-7717)、Eメール(suginami-akiya@hosoda.co.jp)、または相談専用フォームから行います。この申し込み先は、区と協定を結んでいる株式会社細田工務店の連絡先です(杉並区公式ホームページ)。直接連絡しづらい場合は、前述の住宅課空家対策係でも予約を受け付けてもらえるため、どちらから入っても問題ありません。

専門家による無料相談との違いと使い分け

杉並区には利活用相談窓口とは別に、「専門家による空家等総合無料相談」という制度も用意されています。こちらは弁護士・司法書士・宅建士など複数の専門家に同時に相談できるのが特徴で、開催は毎月第3木曜日、1回あたり45分以内です(杉並区公式ホームページ)。希望者はオンラインでの相談も可能となっています。維持管理や税金、相続、賃貸やリフォーム、売却など、法律や資格が関わる込み入った疑問をまとめて聞きたいときに向いています。

2つの制度をどう使い分けるかで迷ったら、次のように考えるとわかりやすいでしょう。まず「空き家をどう活用しようか」という方向性から相談したい段階では、利活用相談窓口が適しています。一方、相続の権利関係や税金の扱いなど、専門知識を要する具体的な論点がすでに見えている場合は、複数の専門家に同時に聞ける総合無料相談を選ぶと効率的です。どちらも無料なので、状況に応じて両方を活用しても構いません。

空き家のマッチング支援の仕組みと現実

杉並区では空き家対策の一環として、空き家所有者と活用希望者をつなぐマッチング支援も行っています。これは地域交流や地域コミュニティの活性化に貢献する使い方を前提とした仕組みで、区は杉並区内に空き家や空きスペースを持ち、地域活用向けに貸し出せる所有者を募集しています(杉並区公式ホームページ)。単なる賃貸ではなく、地域社会への貢献を軸にしている点が一般的な不動産取引と大きく異なります。

ただし、このマッチングには建物側の条件があることを理解しておく必要があります。国土交通省によると、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に建築)の建物は耐震性不足のものが多いとされており、利活用時には必要に応じて耐震診断や改修を行うことが案内されています(国土交通省)。加えて、耐震だけでなく建築基準法への適合、具体的には建築確認済証の取得も必要となります。古い建物ほど、貸し出す前に一定の投資や確認作業が発生しうる点は現実として押さえておきましょう。

期待値を正しく持つために、実績にも触れておきます。利活用相談窓口の令和6年度の実績は相談件数87件、うち区内空家62件で、解決件数は13件でした。令和7年度は相談件数95件、解決件数27件と増えており、窓口開設からの累計では相談182件、解決40件に達しています(杉並区公式資料)。もっとも、公開されている累計のマッチング件数は0件です。つまり、相談を通じて解決には至っても、地域活用型のマッチングとして成立させるにはハードルがあるのが実情です。マッチングありきで考えるより、まず相談窓口で幅広い選択肢を検討する姿勢が現実的といえます。

活用だけでなく「解体」や「税」も相談できる

空き家の相談は活用だけに限りません。老朽化が進んで危険な状態になった空き家については、除却、つまり解体の費用を助成する制度があります。杉並区の老朽危険空家除却費用の助成制度では、助成額は除却工事費の80%または150万円のいずれか低い額とされています(杉並区公式ホームページ)。ただし工事着手前に交付申請を行い、交付決定を受ける必要があり、工事に着手した後の申請は受け付けられません。また、この助成はすべての空き家が対象ではなく、危険性の高い建物などに限られる点には注意が必要です。

反対に、地域に役立つ活用を目指す場合は費用面の後押しもあります。区の空家等利活用モデル事業では、地域交流や地域コミュニティの活性化に貢献する事業に選定されると、改修工事費などの助成を受けられる仕組みが案内されています(杉並区公式資料)。リーフレット上の金額例では、改修工事費の3分の2で最大300万円、設計監理費の3分の2で最大50万円とされています。こうした支援があるかどうかも含めて、まずは相談窓口で確認するのが近道です。

相続した空き家を売却する場合は、税制上の特例が使えることがあります。国税庁によると、相続または遺贈で取得した被相続人の居住用家屋やその敷地を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売り、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できるとされています(国税庁)。適用には細かな要件があり、個別の事情によって使えるかどうかが変わります。実際に適用できるかは、国税庁の情報を確認したうえで税務署や税理士に相談するのが確実です。

なお、管理が不十分な空き家を放置し続けることには制度上のリスクもあります。国土交通省の改正空家法に関する資料では、市区町村長から勧告を受けた管理不全空家の敷地について、住宅用地の特例が解除されると示されています(国土交通省)。特例が外れれば土地の固定資産税の負担が重くなる可能性があるため、状態が悪化する前に早めに動く意味は小さくありません。

相談窓口を上手に活用するための準備

相談をスムーズに進めるためには、事前にいくつか情報を整理しておくと効果的です。まず伝えるべきは、住所・氏名・相談内容という基本的な事項です。あわせて、空き家の所在地・築年数・現在の状態、たとえば空き家になった時期や建物の傷み具合を把握しておくと、担当者が状況を理解しやすくなります。さらに、売りたい・貸したい・活用したい・処分したいといった大まかな希望を言葉にしておくと、より具体的なアドバイスを受けられます。

相続が絡む場合は、登記情報や遺産分割協議書の有無を確認しておくと話が早く進みます。とはいえ、これらが揃っていなくても相談は受け付けてもらえます。「何から手をつければいいかわからない」という段階でも問題ありませんので、まずは電話やメールで問い合わせるだけでも、頭のなかが整理されていきます。無料で利用できる制度である以上、最初の一歩のハードルは決して高くありません。

もし杉並区の制度が自分の状況に合わないと感じた場合には、別の選択肢も知っておくと安心です。東京都には、都内の空き家所有者と活用希望者が利用できる無料のワンストップ相談窓口が設けられています(東京都住宅政策本部)。区の制度では対応が難しいケースでも、こうした都のルートを併用することで解決の糸口が見つかることがあります。窓口を一つに絞らず、複数の入口を柔軟に使い分ける姿勢が大切です。

まとめ

杉並区には物件掲載型の「空き家バンク」はありませんが、無料で使える「空家等利活用相談窓口」を中心に、専門家による総合無料相談やマッチング支援、除却助成など、空き家の悩みに応じた制度がそろっています。相談窓口は活用から売却、解体、相続まで幅広く対応し、区内在住であれば区外の物件やマンションの空き室についても相談できます。空き家を放置するリスクを考えれば、状態が良いうちに早めに動くことが最善です。「どうすればいいかわからない」という段階でも、まずは住宅課や相談窓口へ電話やメールで問い合わせてみましょう。

参考文献・出典

  • 杉並区公式ホームページ「空家等利活用相談窓口」 – https://www.city.suginami.tokyo.jp/s093/17358.html
  • 杉並区公式ホームページ「専門家による空家等総合無料相談」 – https://www.city.suginami.tokyo.jp/s093/1842.html
  • 杉並区公式ホームページ「空き家のマッチング」 – https://www.city.suginami.tokyo.jp/s093/25120.html
  • 杉並区公式ホームページ「空家等対策」 – https://www.city.suginami.tokyo.jp/s093/18657.html
  • 杉並区「空き家実態調査報告書(令和7年3月)」 – https://www.city.suginami.tokyo.jp/documents/6463/r06akiyahoukokusyo.pdf
  • 杉並区公式ホームページ「老朽危険空家除却費用の助成制度」 – https://www.city.suginami.tokyo.jp/s093/1839.html
  • 東京都住宅政策本部「東京都 空き家情報サイト 相談窓口情報」 – https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/akiya/mado
  • 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621961.pdf
  • 国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html
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