中古物件を探していると、「境界未確定」という言葉に出くわすことがあります。「これって何が問題なの?」「値引きできるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。実は境界未確定の物件には、価格交渉の余地がある一方で、見落とすと大きな損失につながるリスクも潜んでいます。この記事では、境界未確定とはどういう状態なのかを基礎から丁寧に解説し、値引き交渉の現実的な考え方や、購入前に必ず確認すべきポイントまでをわかりやすくお伝えします。不動産投資の初心者の方はもちろん、マイホーム購入を検討している方にも役立つ内容です。
境界未確定とはどういう状態か

まず押さえておきたいのは、「境界未確定」という言葉の意味です。土地には必ず隣の土地との境目があり、その境目を法的に確認・合意した状態を「境界確定」と呼びます。逆に、隣地所有者との合意が取れておらず、どこまでが自分の土地かが正式に定まっていない状態が「境界未確定」です。
日本の土地の多くは、明治時代に作られた地図(公図)をもとに管理されています。国土交通省の情報によると、土地の位置や形状を示す図面の約半分は明治時代に作られた地図に基づく100年以上前の情報であり、実態とズレがあることも多いとされています(国土交通省 https://www.magazine.mlit.go.jp/discover/d007/)。つまり、古い図面が存在していても、現実の土地の境目と一致していないケースが珍しくないのです。
さらに重要なのは、「測量図がある=境界が確定している」とは限らないという点です。法務局に備え付けられている「地積測量図」や、売主が単独で作成した「測量図」は、隣接するすべての土地所有者が境界確認をして作成した「確定測量図」ではない可能性があります(埼玉県 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/208895/r7faqgozyuonn.pdf)。書類が存在するからといって安心せず、それが「確定測量図」かどうかを必ず確認することが大切です。
境界未確定の物件が抱える具体的なリスク

境界未確定の物件には、購入後に深刻なトラブルへと発展しうるリスクがいくつか存在します。最も身近なのは、隣地との境界トラブルです。「あなたの塀がうちの土地に入っている」「駐車場の一部が越境している」といった争いは、境界が曖昧なままだと解決の糸口すら見つかりにくくなります。
また、住宅ローンの審査にも影響が出ることがあります。境界が明確でない土地は将来的な境界トラブルのリスクから購入検討者に敬遠されやすく、住宅ローン審査では確定測量図の提出を求められることがあるため、境界が曖昧な状態では融資が付きにくい点も大きなネックです(SUUMO https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/20260309/001)。投資用物件として購入を検討している場合、融資が受けられないとなれば計画そのものが崩れてしまいます。
さらに深刻なのが「筆界未定」という状態です。境界が確認できない土地や、所有者が地籍調査の立会いに応じない土地は「筆界未定」として扱われます(横浜市 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kankyohozen/kansoku/chiseki/process.html)。筆界未定になった土地は地籍図に境界線が描かれず、土地の所在が確定しないため、分筆・地目変更・売買・抵当権の設定などの登記手続きやその後の土地利用に支障が出る恐れがあります(福井県坂井市 https://www.city.fukui-sakai.lg.jp/chiseki-chosa/faq/chisekiquestion010.html)。つまり、将来的に物件を売りたいと思ったときにも、大きな障害となりうるのです。
値引き交渉の現実と注意点
境界未確定の物件は、値引き交渉の余地があるのは事実です。境界確定やトラブル解消のコストが見込まれるため、買取価格が市場価格より低くなることがあります(SUUMO https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/20260309/001)。売主側も「境界が確定していない」という弱みを認識しているケースが多く、価格交渉に応じてもらいやすい状況が生まれやすいのです。
ただし、値引き額と実際にかかるコストのバランスを冷静に見極めることが非常に重要です。境界未確定を解消するには、隣地所有者との話し合い、再測量、登記手続きが必要になることが多く、費用や時間の負担が大きくなります(川口市 https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01120/020/kawaguchishichisekityousagiyou/32106.html)。また、筆界未定を解消するためには、あらためて土地所有者間で境界を確定し登記所に届け出る必要があり、測量や登記事務の費用は個人負担となります(横浜市 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kankyohozen/kansoku/chiseki/process.html)。値引きで得た金額が、解消にかかる費用を下回るようでは本末転倒です。
さらに注意したいのは、隣地所有者が話し合いに応じてくれるかどうかが不確実な点です。確定測量図の最も重要な役割は隣地との合意を証明することですが、図面作成時から現在までの間に隣地の所有者が変わっている場合、当時の合意が新しい所有者に承継されているかどうかが問題となります(SUUMO https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/20260316/001)。値引き交渉をする前に、まず「境界確定が現実的に可能かどうか」を専門家に相談して見極めることが先決です。
購入前に必ず確認すべきポイント
境界未確定の物件を検討する際、購入前に確認すべき事項がいくつかあります。重要なのは、不動産業者からの説明内容をしっかり理解することです。宅地建物取引業法では、購入者に不測の損害が生じることを防止するため、宅地建物取引業者に対し、契約を締結するかどうかの判断に多大な影響を及ぼす重要な事項について事前に説明することを義務づけています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_fr3_000074.html)。
具体的には、宅建業者は境界確定の状況について現地の杭(境界標)を確認したり、売主に対して境界の明示や境界確定の状況・越境の有無について記載した物件状況等確認書(告知書)の提出を求めるなどの方法で調査を行い、その結果を買主に正確に説明する義務があります。やむを得ず境界が未確定のまま取引する場合は、重要事項説明書にその旨を記載して説明しなければなりません(埼玉県 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/208895/r7faqgozyuonn.pdf)。重要事項説明書を受け取ったら、境界に関する記載を必ず確認しましょう。
また、現地に足を運んで境界標(杭やプレートなど)が実際に設置されているかどうかを自分の目で確認することも大切です。境界標が亡失している場合は、古い図面だけでは境界を正確に再現できないことがあるため、現況と照らして最新図面を作るのが現実的とされています(SUUMO https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/20260316/001)。購入を真剣に検討するなら、土地家屋調査士などの専門家に相談し、境界確定の実現可能性と費用の見積もりを事前に取ることを強くおすすめします。
なお、地籍調査の制度面では、令和6年7月から「土地境界のみなし確認制度」がスタートし、土地所有者から応答がない場合でも一定条件のもとで調査を進められるようになりました(国土交通省 https://www.magazine.mlit.go.jp/discover/d007/)。ただし、この制度の詳細な適用条件や手続きについては、最新情報を国土交通省の公式サイトでご確認ください。
まとめ
境界未確定の中古物件は、値引き交渉の余地がある一方で、住宅ローン審査の通りにくさ、隣地トラブルのリスク、登記手続きへの支障など、見過ごせないリスクを抱えています。値引き額だけに目を向けず、境界確定にかかるコストや時間、そして実現可能性を総合的に判断することが大切です。購入前には重要事項説明書の内容をしっかり確認し、不明な点は宅建業者に質問する習慣をつけましょう。専門家である土地家屋調査士への相談も、賢い選択肢のひとつです。正しい知識を持って臨めば、境界未確定の物件も適切に判断できるようになります。焦らず、一つひとつ確認を重ねながら、納得のいく不動産取引を実現してください。
参考文献・出典
- 国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の改正について」 — https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_fr3_000074.html
- 国土交通省「地籍調査 | Grasp(グラスプ)」 — https://www.magazine.mlit.go.jp/discover/d007/
- 国土交通省「土地・不動産・建設業:地籍整備」 — https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk6_000005.html
- 埼玉県「令和7年度版 宅建業者向けFAQ(令和7年12月1日現在)」 — https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/208895/r7faqgozyuonn.pdf
- 横浜市「地籍調査の進め方」 — https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kankyohozen/kansoku/chiseki/process.html
- 川口市「境界が確定しない場合は」 — https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01120/020/kawaguchishichisekityousagiyou/32106.html
- 福井県坂井市「筆界未定について具体的に教えてください。」 — https://www.city.fukui-sakai.lg.jp/chiseki-chosa/faq/chisekiquestion010.html
- SUUMO「売れない土地はどうする?放置する前に知っておくべき対策」 — https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/20260309/001
- SUUMO「確定測量図とは?地積測量図との違いや費用、ない場合の対処法」 — https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/20260316/001
- 不動産流通推進センター「令和7年度版 不動産売買の手引」 — https://www.retio.or.jp/wp-content/uploads/2025/06/R07%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E5%A3%B2%E8%B2%B7%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95_%E4%BB%A4%E5%92%8C7%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88.pdf