不動産の税金

解体・更地渡しの売買契約書と特約の基本を解説

古家付きの土地を売買する際、「更地にして引き渡してほしい」という条件が付くケースは少なくありません。しかし、解体や更地渡しに関する取り決めを口頭だけで済ませてしまうと、引き渡し後に「費用の負担はどちらか」「解体が間に合わなかった」といったトラブルに発展することがあります。こうした問題を防ぐために重要な役割を果たすのが、売買契約書に盛り込む「特約」です。この記事では、更地渡しの基本的な仕組みから、売買契約書に記載すべき特約のポイントまでを、初心者にも分かりやすく解説します。

更地渡しとは何か、なぜ特約が必要なのか

更地渡しとは何か、なぜ特約が必要なのかのイメージ

更地渡しとは、建物が建っている土地を売買する際に、売主が建物を解体・撤去してから買主に引き渡す方法のことです。買主にとっては更地の状態で土地を受け取れるため、すぐに新築工事や活用を始めやすいというメリットがあります。一方で、売主にとっては解体費用と時間が必要になるため、事前の計画が欠かせません。

不動産売買契約では、通常の条件とは別に、個別事情に応じた「特約事項」を定めることがあります。特約事項は、売主・買主双方の認識のずれを防ぎ、引き渡し後のトラブルを避けるために重要な役割を果たします(公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会)。更地渡しの場合は特に、解体に関する費用負担・工事の時期・引き渡し条件などを明確に文書化しておくことが不可欠です。

口頭での合意だけでは、後から「そんな約束はしていない」という言い争いになりかねません。売買契約書という法的効力を持つ書面に特約として明記することで、双方が安心して取引を進められる環境が整います。特に解体工事は費用と時間がかかるため、引き渡しまでに間に合うよう手配する必要があり(SUUMO)、スケジュールを含めた取り決めを契約書に落とし込むことが大切です。

売買契約書の特約に盛り込むべき主なポイント

売買契約書の特約に盛り込むべき主なポイントのイメージ

更地渡しの売買契約書を作成する際、特約として記載しておくべき事項はいくつかあります。まず押さえておきたいのは、解体費用の負担者・解体完了の期限・引き渡し時の状態の3点です。

解体費用の負担については、売買価格の交渉の中で決定される場合があります。どちらが負担するかを曖昧にしたまま契約を締結すると、後から費用を巡るトラブルになりやすいため、特約に明確に記載することが重要です。また、解体完了の期限についても、「引き渡し日の○日前までに解体工事を完了する」といった形で具体的な日程を定めておくと安心です。

引き渡し時の状態についても注意が必要です。建物を解体した後、地中に古い基礎や埋設物が残っていることがあります。こうした地中埋設物の扱いについても、特約で「売主の責任において撤去する」「発見された場合の費用負担は売主とする」などと明記しておくことが望ましいとされています。さらに、売買契約書の標準例では、引き渡し時までに売主が隣地との境界を明示する条項があるため(公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会)、更地渡し案件では境界明示の有無も契約で確認しておきましょう。

契約不適合責任と宅建業法上の注意点

特約を設ける際に見落としがちなのが、契約不適合責任との関係です。契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約の内容に適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことを指します。更地渡しの場合、解体後の土地の状態が契約内容と異なる場合にこの責任が問われることがあります。

宅地建物取引業法では、宅建業者が売主となる売買契約において、引き渡しの日から2年以上となる特約を除き、買主に不利な契約不適合責任の特約をしてはならず、反する特約は無効とされています(宅地建物取引業法 / e-Gov法令検索)。つまり、売主が宅建業者の場合、買主の権利を不当に制限するような特約は法律上認められないということです。

一方、売主が個人(一般の方)の場合は、当事者間の合意によって契約不適合責任の範囲を調整することが可能です。ただし、あまりに買主に不利な内容は後のトラブルの原因になりますので、専門家である不動産会社や司法書士に相談しながら特約の内容を決めることをおすすめします。契約チェックリストでは、所有権の移転・引き渡し時期、危険負担、契約不適合責任の期間、その他特に定めておく事項を確認すべきとされており(公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会)、これらを漏れなく確認することが大切です。

印紙税と空き家特例に関わる税務上の注意点

更地渡しの売買契約書を作成する際には、税務上の取り扱いにも注意が必要です。まず印紙税については、老朽建物などを解体撤去することを条件とする売買契約書で、売買価額が解体により生じる素材価額相当額以下であるなど、構成素材の売買であることが明らかなものは、印紙税の課税文書に該当しない取り扱いがあります(国税庁)。ただし、この取り扱いが適用されるかどうかは個別の事情によりますので、詳細は税理士や国税庁の公式サイトでご確認ください。

次に、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除についてです。令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以降の譲渡については、譲渡の時からその翌年の2月15日までに家屋を取り壊した場合も、この特例の適用を受けられるようになりました(国土交通省)。これは、売買契約後に買主が建物を解体するケースでも特例を活用できる可能性があることを意味します。

ただし、この特例を活用するためには買主の協力が不可欠です。特約等を締結していない場合も確認書の発行は可能ですが、買主の協力が得られなかったことにより特例を適用できないトラブルを防ぐ観点から、売買契約書の特約として取り壊しに関する合意を明記しておくことが推奨されています(国土交通省)。税制上のメリットを確実に活用するためにも、特約の内容を慎重に検討することが重要です。

まとめ

更地渡しの売買契約では、解体費用の負担者・工事完了の期限・引き渡し時の状態・地中埋設物の扱いなど、通常の土地売買よりも多くの事項を特約として明記する必要があります。また、宅建業法上の契約不適合責任のルールや、印紙税・空き家特例といった税務上の取り扱いも、取引の内容によって異なります。

重要なのは、口頭での合意に頼らず、すべての取り決めを売買契約書の特約として文書化することです。特約の内容が不明確なまま契約を進めると、引き渡し後に費用や責任を巡るトラブルに発展するリスクがあります。不動産会社や司法書士・税理士などの専門家に相談しながら、双方が納得できる特約を丁寧に作り上げることが、安心・安全な取引への第一歩となります。制度の詳細や最新情報については、各公的機関の公式サイトで必ずご確認ください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 – 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html
  • 国税庁 – 第1号の1文書 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/betsu01/01.htm
  • e-Gov法令検索 – 宅地建物取引業法 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176?occasion_date=20240315
  • 公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 – 不動産を売り出す(不動産基礎知識) https://www.fudousan.or.jp/kiso/sale/4_1.html
  • 公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 – 土地・建物売買契約書(土地実測売買) https://www.fudousan.or.jp/kiso/buy/images/pdf/9_2_keiyaku.pdf
  • 公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 – 売買契約を結ぶ(不動産基礎知識) https://www.fudousan.or.jp/kiso/sale/6_2.html
  • SUUMO – 物件引き渡しの手続きや必要書類。抵当権抹消や所有権移転登記も解説 https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/jukatsu-hikiwatashi/

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