この記事の結論
- 不動産を渡した側には譲渡所得税がかかり、受け取った側には通常贈与税はかからない。
- 自宅売却なら3,000万円特別控除が使える可能性があるが、確定申告が必須。
- 財産分与の申立ては、2026年3月31日までの離婚なら離婚から2年、2026年4月1日以降の離婚なら改正民法により離婚から5年が期限。
離婚が決まったとき、「家はどうなるの?」「税金はいくらかかるの?」と不安になる方は多いです。特に不動産が絡む場合、財産分与・売却・税金という3つの問題が一度に押し寄せてきます。この記事では、不動産の知識がなくても理解できるよう、離婚時の不動産に関する税金の仕組みを順番に説明します。「渡す側」と「受け取る側」で税金の扱いがまったく異なるため、自分がどちらのケースに当てはまるかを確認しながら読み進めてください。
財産分与とは何か、まず基本を押さえる

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分け合うことです。法務省の案内(https://www.moj.go.jp/MINJI/parents_012.html)によると、財産分与の基本は「夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配」とされています。
ただし、すべての財産が対象になるわけではありません。裁判所の案内(https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html)では、婚姻前から各自が持っていた財産や、婚姻中でも相続・贈与で取得した財産は、財産分与の対象にはならないと考えられています。たとえば、結婚前から持っていた土地や、親から相続した実家は、原則として分与の対象外です。
また、財産分与には期限があります。民法768条によると、離婚後、協議が調わないときは家庭裁判所に財産分与を請求することができます。この請求期間は、2026年3月31日までに離婚した場合は離婚から2年以内、2026年4月1日以降に離婚した場合は改正民法(2026年4月1日施行)により離婚から5年以内に行う必要があります。離婚後に「やっぱり家の分与を求めたい」と思っても、期限を過ぎると手続きができなくなるため、早めに動くことが大切です。
ここまでのまとめ: 財産分与は婚姻中に共同で築いた財産が対象で、申立ての期限は離婚時期によって異なり、2026年3月31日までの離婚なら2年、2026年4月1日以降の離婚なら5年です。
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不動産を「渡す側」にかかる税金

不動産を財産分与として相手に渡す場合、渡した側に税金がかかります。これは多くの方が見落としがちな落とし穴です。
国税庁の説明(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3114.htm)によると、財産分与が土地や建物で行われたときは、分与した人に譲渡所得税(じょうとしょとくぜい)の課税が行われます。譲渡所得税とは、不動産を売ったときに得た利益にかかる税金のことです。財産分与は「売買」ではありませんが、税法上は「時価で売った」とみなされます。
課税の計算は「収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額」で行います(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm)。収入金額は、財産分与した時点の時価です。取得費とは、もともとその不動産を購入したときの代金や諸費用のことです。つまり、昔安く買った不動産を今の高い時価で分与すると、その差額に税金がかかる可能性があります。
税率は所有期間によって大きく変わります。国税庁の情報(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm)によると、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」として所得税15%・住民税5%、5年以下の場合は「短期譲渡所得」として所得税30%・住民税9%が課されます。所有期間が短いと税率が約2倍になるため、注意が必要です。
ここまでのまとめ: 不動産を渡す側は、時価を基準に譲渡所得税が課され、所有期間5年超なら合計税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)、5年以下なら合計39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)が目安です(2037年までは復興特別所得税が上乗せされます)。
不動産を「受け取る側」にかかる税金
不動産を財産分与として受け取る側は、どうなるのでしょうか。国税庁の説明(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4414.htm)によると、離婚により相手方から財産をもらった場合、通常は贈与税がかかりません。これは財産分与が「贈与」ではなく、婚姻中に共同で築いた財産の清算とみなされるためです。
ただし、例外があります。分与された財産の額が、婚姻中に夫婦が協力して得た財産の額やその他の事情を考慮してもなお多すぎる場合、その多すぎる部分には贈与税がかかります。また、離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合は、財産すべてに贈与税がかかることもあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4414.htm)。
受け取った側が将来その不動産を売る場合も注意が必要です。国税庁の説明によると、財産分与で受け取った不動産は、受け取った日の時価で取得したものとして扱われます。そのため、将来売却するときの長期・短期の判定も、財産分与を受けた日が起算点になります。元の所有者が長年持っていた不動産でも、受け取った日からカウントし直しになる点を覚えておきましょう。
受け取る側には、登録免許税(とうろくめんきょぜい)と不動産取得税(ふどうさんしゅとくぜい)もかかります。登録免許税とは、不動産の名義変更(所有権移転登記)にかかる税金で、法務局の資料(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001325692.pdf)によると財産分与の場合は不動産の固定資産税評価額の1000分の20(2%)です。不動産取得税については、財産分与のうち夫婦の共有財産を清算する性質のもの(清算的財産分与)であれば非課税となるのが一般的な扱いですが、慰謝料的・扶養的な性質を持つ場合は課税対象となることがあります。個別の判定については都道府県税事務所への確認が必要です。
ここまでのまとめ: 受け取る側は通常贈与税がかからないが、登録免許税(評価額の2%)と不動産取得税が別途かかります。
自宅を売るなら「3,000万円特別控除」を確認する
離婚に際して自宅を売却する場合、「3,000万円特別控除」という大きな節税の仕組みが使える可能性があります。これは、マイホームを売ったときの利益から最大3,000万円を差し引ける特例です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。
自宅が夫婦の共有名義になっている場合、特別控除の扱いは少し複雑です。国税庁の説明(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm)によると、共有のマイホームを売った場合、譲渡所得の計算は共有者それぞれの持分に応じて行います。そして3,000万円の特別控除は、共有者全員で3,000万円ではなく、適用要件を満たす共有者1人につき最高3,000万円です。つまり、夫婦それぞれが要件を満たせば、合計で最大6,000万円の控除が受けられる可能性があります。
すでに引っ越して住んでいない家でも、この特例が使える場合があります。国税庁の説明(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)によると、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば対象になり得ます。離婚後に片方が家を出た場合でも、早めに売却すれば特例を使える可能性があるため、時期の検討が重要です。
一方で注意点もあります。この特例は、親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却には使えません。また、特例を受けるためには確定申告が必ず必要です。申告は、売却した年の翌年2月16日から3月15日の間に行います(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm)。申告を忘れると特例が受けられないため、売却後は必ず税務署か税理士に相談することをおすすめします。
さらに、所有期間が10年を超えるマイホームを売る場合は、軽減税率の特例も使える可能性があります。国税庁の説明(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)によると、この軽減税率の特例は3,000万円特別控除と重ねて受けることができます。長く住んでいた自宅を売る方は、この点も税理士に確認してみてください。
ここまでのまとめ: 自宅売却なら3,000万円特別控除が使える可能性があり、共有名義なら1人ずつ最大3,000万円の控除が受けられます。ただし確定申告が必須です。
売却時にかかるその他の費用と手続き
税金以外にも、不動産の売却や名義変更にはいくつかの費用がかかります。全体像を把握しておくと、後から「こんな費用があったのか」と慌てずに済みます。
まず、売買契約書には印紙税がかかります。国税庁の情報(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm)によると、令和9年3月31日までは軽減措置が適用されており、売買金額が1,000万円超5,000万円以下なら1万円、5,000万円超1億円以下なら3万円の印紙税額となっています。
名義変更の登記手続きについては、法務局の資料(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001443993.pdf)によると、財産分与協議書などが登記原因証明情報として必要になります。また、協議離婚の届出前に財産分与の協議が成立した場合は、離婚届出日が原因日となるため、離婚の記載のある戸籍謄本も必要です。登記申請に必要な書類は、登記識別情報・登記原因証明情報・代理権限証明情報・印鑑証明書・住所証明情報などです(法務局 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001435622.pdf)。
住宅ローンが残っている場合は、特に慎重な対応が必要です。ローンが残ったまま名義変更や売却を行うには、金融機関の承諾が必要になるケースが一般的とされています。ただし、この点については金融機関ごとに対応が異なるため、必ずご自身の金融機関に直接確認してください。
ここまでのまとめ: 売却・名義変更には印紙税・登録免許税・不動産取得税・登記費用がかかり、住宅ローンが残る場合は金融機関への確認が不可欠です。
まとめ
離婚時の不動産に関する税金は、「渡す側」と「受け取る側」で大きく異なります。渡す側には譲渡所得税がかかり、所有期間によって税率が変わります。受け取る側は通常贈与税がかかりませんが、登録免許税や不動産取得税は別途発生します。自宅を売却する場合は3,000万円特別控除という大きな節税の仕組みがありますが、確定申告を忘れると使えません。また、財産分与の申立てには期限があるため、離婚後は早めに専門家(税理士・司法書士・弁護士)に相談することをおすすめします。税金の計算は個別の事情によって大きく変わるため、この記事の内容はあくまで基本的な考え方の参考としてください。最新の制度情報は国税庁(https://www.nta.go.jp)の公式サイトでご確認ください。
ご自身の不動産が今どのくらいの価値になるかを知ることが、税金の見通しを立てる第一歩です。
参考文献・出典
- 国税庁 No.4414 離婚して財産をもらったとき — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4414.htm
- 国税庁 No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3114.htm
- 国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
- 国税庁 No.3308 共有のマイホームを売ったとき — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm
- 国税庁 No.3102 譲渡所得の申告期限 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm
- 国税庁 No.7108 不動産の譲渡に関する契約書に係る印紙税の軽減措置 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
- 法務省 りこんポータル|離婚を考えている方へ — https://www.moj.go.jp/MINJI/parents_012.html
- 裁判所 家事事件Q&A — https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html
- 法務局 所有権移転登記申請書(財産分与)の解説・注意事項 — https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001443993.pdf
- 法務局 登記申請書記載例(財産分与) — https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001435622.pdf
- 法務局 登録免許税の計算 — https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001325692.pdf
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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