この記事の結論
- 再建築不可物件を相続した場合、まず道路の種類を確認することが最初の判断ステップです。
- 相続登記は2027年3月31日までに申請しないと10万円以下の過料の対象になります。
- 売る・貸す・国に返す、の3つの出口を知ったうえで専門家に相談するのが最善策です。
「親が亡くなって実家を相続したら、建て替えができない土地だった」という状況は、決して珍しくありません。再建築不可(さいけんちくふか)とは、現在建っている建物を壊した後に、新しい建物を建てられない土地のことです。こうした土地を相続すると、売れるのか、どう扱えばいいのか、税金はどうなるのかと、疑問が次々と湧いてきます。この記事では、再建築不可の土地を相続した50代の方が「何をすべきか」を順番に整理します。登記の期限、税金の評価、売却や国への返還まで、公的機関の情報をもとに具体的に解説します。
まず確認:あなたの土地はなぜ「再建築不可」なのか

再建築不可になる理由を知ることが、対策の第一歩です。理由によって取れる手段がまったく変わるからです。
建物を建てるには、その土地が「建築基準法第42条に定める道路」に2メートル以上接していなければなりません(神戸市 https://www.city.kobe.lg.jp/a81042/business/todokede/jutakutoshikyoku/building/procedure/43.html)。この条件を「接道義務(せつどうぎむ)」といいます。相続した土地が再建築不可になっている理由の多くは、この接道義務を満たしていないことです。
ただし、道路に面しているように見えても注意が必要です。京都市の公式情報によると、市が認定した道路であっても幅員(ふくいん、道路の横幅のこと)が4メートル未満の場合は、建築基準法上の道路に当たらないことがあります(京都市 https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000125248.html)。つまり、「道路に面しているから大丈夫」とは言い切れないのです。
一方で、幅員が4メートル未満でも「2項道路(にこうどうろ)」と呼ばれる種類の道路に面している場合は、話が変わります。2項道路とは、昭和25年の基準時点で建物が建ち並んでいた幅員1.8メートル以上の通り抜け道路のことです。この場合は、道路の中心線から2メートル後退(セットバック)することを条件に、建て替えができる可能性があります(京都市 https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000125248.html)。
さらに、接道義務を満たしていない土地でも、建築基準法第43条第2項第二号に基づく許可を取得できれば、建て替えが認められるケースもあります(神戸市 https://www.city.kobe.lg.jp/a81042/business/todokede/jutakutoshikyoku/building/procedure/43.html)。許可の基準や必要書類は自治体ごとに異なるため、まずは土地のある市区町村の建築指導担当窓口に相談することをお勧めします。
ここまでのまとめ: 再建築不可かどうかは「道路の種類と幅員」で決まり、自治体窓口への確認が最初の一歩です。
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相続登記は2027年3月31日が期限です

土地の扱いを考える前に、まず登記(とうき)の手続きを済ませる必要があります。登記とは、「この土地の持ち主は誰か」を法務局に記録する手続きのことです。
法務省の情報によると、相続登記の申請義務化は2024年4月1日から始まっており、それ以前の相続で未登記の不動産も対象です(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html)。期限は原則として2027年3月31日まで、または相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内のいずれか遅い方です。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料(かりょう、行政上の罰金のようなもの)の対象になります。
「遺産分割の話し合いがまとまらず、すぐに登記できない」という場合は、「相続人申告登記(そうぞくにんしんこくとうき)」という簡易な手続きで、とりあえず義務を果たすことができます(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html)。ただし、この手続きだけでは土地を売ったり、担保に入れたりすることはできません。最終的には通常の相続登記が必要になります。
また、亡くなった方がどんな不動産を持っていたか把握しきれていない場合は、「所有不動産記録証明制度(しょゆうふどうさんきろくしょうめいせいど)」を使うと、被相続人名義の不動産を一覧で確認できます(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html)。登記漏れを防ぐためにも、活用を検討してみてください。
ここまでのまとめ: 相続登記は2027年3月31日が期限で、放置すると過料のリスクがあります。
相続税の評価額は「普通の土地より低くなる」
再建築不可の土地は、相続税の計算上、評価額が下がる場合があります。これは、使い勝手が悪い分だけ価値が低く見られるためです。
国税庁の情報(令和8年4月1日現在法令等)によると、接道義務を満たしていない宅地は「無道路地(むどうろち)」として扱われ、路線価に基づく評価額から一定の範囲内で控除して評価します(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4620.htm)。つまり、同じ広さの普通の土地より、相続税の計算上の価値が低くなるということです。
また、2項道路に面していてセットバックが必要な土地の場合は、セットバック部分について通常の評価額から70%相当額を控除して評価します(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4604_qa.htm)。セットバック部分は将来的に道路として使われる扱いになるため、その分だけ評価が下がる仕組みです。
ただし、評価の計算方法は複雑で、土地の形状や周辺の路線価(ろせんか、道路に面した土地の価格の目安)によって結果が変わります。相続税の申告が必要な場合は、税理士に相談することを強くお勧めします。評価の仕方によって納税額が大きく変わることがあるからです。
ここまでのまとめ: 再建築不可の土地は相続税評価が下がる可能性があるため、専門家への相談が節税につながります。
売る・貸す・国に返す、3つの出口を知っておく
再建築不可の土地を相続したとき、選べる出口は大きく3つあります。それぞれの特徴を知ったうえで、自分の状況に合った選択をすることが大切です。
売却する場合、再建築不可の物件は一般的に市場価格が低くなる傾向があります。ただし、隣地の所有者が購入を希望するケースや、リフォームを前提とした買い手がつくケースもあります。また、被相続人(亡くなった方)が住んでいた家屋と敷地を売る場合、一定の要件を満たせば、令和9年12月31日までの譲渡について譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3317.htm)。なお、2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は上限が2,000万円になります。要件が細かいため、売却前に税理士への確認が必須です。
賃貸として活用する場合、建て替えはできなくても、現在の建物を修繕・リフォームして貸し出すことは可能です。ただし、建物の老朽化が進んでいる場合は修繕費用がかさむリスクがあります。また、空き家のまま放置して「管理不全空家」や「特定空家」として市区町村から勧告を受けると、土地の固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が外れてしまうリスクがあります(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024020102.html)。
国に返す(相続土地国庫帰属制度)という選択肢もあります。これは相続や遺贈で取得した土地を国に引き取ってもらえる制度で、相談先は土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)です(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00459.html)。ただし、建物が残っている土地は申請できません。建物の登記がなくても、現に建物が存在する場合は対象外です。審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、承認後には10年分の標準的な管理費用を考慮した負担金の納付も必要です(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00459.html)。
なお、相続放棄(そうぞくほうき)という手段もありますが、これは再建築不可の土地だけを手放す制度ではありません。プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄する手続きです(仙台家庭裁判所 https://www.courts.go.jp/sendai/vc-files/sendai/相続放棄の手続案内.pdf)。期限は相続人になったことを知ったときから原則3か月以内で、判断材料が揃わない場合は家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることができます(裁判所 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)。
ここまでのまとめ: 売る・貸す・国に返す、それぞれに条件と費用があるため、状況に合わせた選択が必要です。
まとめ
再建築不可の土地を相続したとき、最初にすべきことは「なぜ再建築不可なのか」を自治体窓口で確認することです。道路の種類によっては、建て替えができる可能性が残っているケースもあります。次に、2027年3月31日という相続登記の期限を守ることが重要です。放置すると過料のリスクがあるだけでなく、売却や担保設定もできなくなります。
税金の面では、再建築不可の土地は相続税評価が下がる可能性があり、売却時には3,000万円特別控除の特例も検討できます。一方で、空き家のまま放置すると固定資産税の優遇が外れるリスクもあります。売る・貸す・国に返すという3つの出口を知ったうえで、税理士や司法書士、自治体の窓口に早めに相談することが、最善の判断につながります。
ご自身の物件が実際にどのような状況にあるかは、現地の専門家に確認するのが最も確実な方法です。
参考文献・出典
- 法務省:相続登記の申請義務化について — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 法務省:相続人申告登記について — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html
- 法務省:所有不動産記録証明制度について — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html
- 法務省:相続土地国庫帰属制度に関するQ&A — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00459.html
- 神戸市:接道許可(建築基準法第43条第2項) — https://www.city.kobe.lg.jp/a81042/business/todokede/jutakutoshikyoku/building/procedure/43.html
- 京都市:建築基準法に基づく道路に関するよくある質問と回答 — https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000125248.html
- 国税庁:No.4620 無道路地の評価 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4620.htm
- 国税庁:No.4604 路線価方式による宅地の評価(セットバック) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4604_qa.htm
- 国税庁:No.3317 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3317.htm
- 国土交通省:空き家対策 特設サイト — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024020102.html
- 裁判所:相続の放棄の申述 — https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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