会社員として不動産投資を始めると、毎年の確定申告で「何を準備すればいいのか」と頭を抱える方は少なくありません。給与所得者は年末調整で税務手続きが完結するため、確定申告の経験がない方がほとんどです。そのため、初めて不動産所得の申告に臨む際、必要書類の種類や提出方法がわからず不安を感じるのは当然のことです。この記事では、国税庁の公式情報をもとに、会社員が不動産投資の確定申告で用意すべき書類を体系的に解説します。申告の仕組みから書類の保存ルールまで、初心者でも迷わず準備できるよう丁寧にまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。
会社員でも確定申告が必要になるケースとは

まず押さえておきたいのは、会社員であっても不動産所得があれば確定申告が必要になる場合があるという点です。国税庁の情報(令和7年4月1日現在法令等)によると、給与収入が2,000万円以下で1か所から給与を受け取り年末調整が済んでいる会社員は、給与所得と退職所得以外の所得合計が20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要とされています。しかし、不動産所得がこの20万円を超えた場合は、申告が義務となります。
一方で、20万円以下だからといって完全に申告と無縁というわけではありません。医療費控除の適用を受けるなど、還付申告を行う場合には、20万円以下の不動産所得も含めてすべての所得を申告する必要があります(国税庁)。つまり、「申告しなくていい」と「申告しても損はない」は別の話であり、自分の状況に応じた判断が求められます。
さらに注意が必要なのは住民税の扱いです。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要になるケースが一般的です。大津市の公式情報(更新日:2026年01月15日)によると、給与所得以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な方でも、市民税・県民税の申告は必要とされています。住民税の申告方法や期限は自治体によって異なるため、お住まいの自治体の公式サイトで最新情報をご確認ください。
申告書類の基本:青色申告と白色申告の違い

不動産所得の確定申告で最初に決めるべきことは、青色申告と白色申告のどちらを選ぶかです。この選択によって、準備する書類の種類が変わってきます。国税庁の様式情報によると、青色申告者は「所得税青色申告決算書(不動産所得用)」を、白色申告者は「収支内訳書(不動産所得用)」を作成・添付することが基本となっています。
青色申告を選ぶ最大のメリットは、青色申告特別控除を受けられる点です。国税庁の情報(令和7年4月1日現在法令等)によると、不動産貸付けが事業的規模で行われており正規の簿記の原則による記帳など一定の要件を満たす場合、最高55万円の控除が受けられます。さらに、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行えば、最高65万円まで控除額が拡大します。事業的規模でない場合でも、最高10万円の控除が適用されます。
ただし、青色申告を利用するには事前の手続きが必要です。国税庁の情報によると、青色申告を行いたい年の原則3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。1月16日以後に新たに不動産賃貸を始めた場合は、開始日から2か月以内が期限となります。申告直前に「青色申告にしたい」と思っても間に合わないケースがあるため、不動産投資を始めた段階で早めに手続きを検討することをおすすめします。
なお、事業的規模かどうかの目安として、国税庁(令和7年4月1日現在法令等)はアパートなどで独立した室数がおおむね10室以上、独立家屋の貸付けではおおむね5棟以上という基準を示しています。会社員が最初に購入する区分マンション1室などは、この基準には該当しないことが多いため、まずは10万円控除の青色申告または白色申告から始めるケースが一般的です。
確定申告で用意する主な書類一覧
実際に申告書を作成する際に必要となる書類は、大きく「申告書類」「収入を証明する書類」「経費を証明する書類」の3種類に分けて考えると整理しやすくなります。
申告書類としては、確定申告書(第一表・第二表)に加え、青色申告者なら「所得税青色申告決算書(不動産所得用)」、白色申告者なら「収支内訳書(不動産所得用)」が必要です(国税庁)。これらは国税庁のウェブサイトからダウンロードできるほか、税務署の窓口でも入手できます。
収入を証明する書類として実務上重要なのは、賃貸借契約書や管理会社からの送金明細・精算書などです。国税庁の帳簿記帳資料によると、領収証・預金通帳・借用証・請求書・見積書・契約書などが保存対象として挙げられており、これらは申告書作成の根拠資料となります。また、給与所得者として勤務先から受け取る源泉徴収票も必要です。2019年4月1日以後の申告では源泉徴収票の添付は原則不要となりましたが(国税庁)、申告書への転記や税務署で申告書を作成する際の持参資料としては引き続き必要となります。
経費を証明する書類については、固定資産税の納税通知書、損害保険料の領収書、修繕費の領収書・請求書、ローンの返済予定表(利子部分の確認用)などが実務上よく使われます。国税庁(令和7年4月1日現在法令等)が必要経費として例示しているのは、固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費などです。また、投資用不動産取得のための借入金利子は経費になり得ますが、元本返済部分は必要経費にはなりません(国税庁)。さらに、所得税・住民税・国民年金保険料などは不動産所得の必要経費にできない点も覚えておきましょう(国税庁)。
不動産所得の計算と損益通算の仕組み
不動産所得の計算方法は、国税庁(令和7年4月1日現在法令等)によると「総収入金額-必要経費=不動産所得の金額」というシンプルな式で表されます。ただし、収入として計上すべき項目は家賃だけではありません。名義書換料・承諾料・更新料・頭金、返還不要の敷金や保証金、共益費名目で受け取る電気代・水道代なども総収入金額に含まれます(国税庁)。これらを漏れなく計上することが正確な申告につながります。
不動産所得が赤字になった場合、その損失は原則として給与所得など他の黒字所得と損益通算できます(国税庁)。会社員にとってこれは大きなメリットで、不動産投資の赤字を給与所得と相殺することで、所得税の還付を受けられる可能性があります。ただし、土地を取得するための借入金利子に対応する損失部分については、他の所得との損益通算ができないという制限があります(国税庁、令和7年4月1日現在法令等)。この点は見落としやすいルールのため、特に注意が必要です。
修繕費の取り扱いにも注意が必要です。修繕費として一括経費処理できるのは、原状回復のための支出に限られます。資産の価値を高めたり使用可能期間を延長したりするような支出は、原則として資本的支出となり、減価償却で処理することになります(国税庁)。たとえば、壁紙の張り替えは修繕費になり得ますが、大規模なリノベーションは資本的支出として扱われることが多いため、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談することをおすすめします。
申告書の提出方法と帳簿保存のルール
確定申告書の提出方法は、税務署への持参・郵送・e-Taxによる電子申告の3つがあります。令和7年分(2025年分)の所得税確定申告の受付期間は、2026年2月16日から2026年3月16日までです(国税庁)。還付申告の場合はこれより前でも提出できます。郵送で提出する場合は、郵便または信書便を利用し、通信日付印の日付が提出日とみなされます(国税庁)。
本人確認書類の取り扱いも確認しておきましょう。紙で申告書を提出する場合は、マイナンバーの記載と本人確認書類の提示または写しの添付が必要です(国税庁)。一方、e-Taxで申告する場合は、マイナンバーカード等の電子証明書で本人確認を行うため、別途本人確認書類を提出する必要はありません(国税庁、更新日:令和2年6月1日)。e-Taxは自宅から申告できる利便性に加え、65万円控除の要件にもなるため、会社員の方にも積極的に活用をおすすめします。
帳簿の保存については、申告の有無にかかわらず義務があります。国税庁の情報によると、不動産所得を生ずべき業務を行うすべての方は記帳と帳簿書類の保存が必要であり、所得税の申告が不要な方も対象となります。保存期間は書類の種類によって異なり、領収証・預金通帳・借用証などの現金預金取引等関係書類は7年、請求書・見積書・契約書・納品書などのその他の書類は5年とされています(国税庁)。確定申告後も書類を捨てずに保管しておくことが大切です。
まとめ
会社員が不動産投資の確定申告を行う際には、申告書類・収入証明書類・経費証明書類を漏れなく準備することが重要です。青色申告か白色申告かの選択、収入と経費の正確な計上、損益通算の活用など、押さえるべきポイントは複数あります。しかし、国税庁の公式情報をもとに一つひとつ確認していけば、初心者でも着実に対応できます。不明点がある場合は、税務署の面接相談(事前予約制)や税理士への相談を活用してください。正確な申告を積み重ねることが、長期的に安定した不動産投資の基盤となります。ぜひ今年の申告から、しっかりとした準備を始めてみてください。
参考文献・出典
- 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900_qa.htm
- 国税庁 確定申告期に多いお問合せ事項Q&A〔申告書の提出〕 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/06.htm
- 国税庁 確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/r07.htm
- 国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁 No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm
- 国税庁 No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm
- 国税庁 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/index.htm
- 国税庁 A1-8 所得税の青色申告承認申請手続 — https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
- 国税庁 令和7年分の所得税等の確定申告の相談及び申告書の受付 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/02/2_02.htm
- 大津市 個人市民税・県民税 申告をしなければならない方について — https://www.city.otsu.lg.jp/apply/zei/shimin/kojin/shin/30339.html