「代々木駅前の再開発はいつ完成するのか」「投資物件を探しているが、再開発の影響が気になる」——こうした疑問を抱える方は少なくありません。代々木駅の西口周辺では、大規模な再開発に向けたまちづくりが動いており、不動産投資家や地域住民から高い関心を集めています。この記事では、現時点で確認できる計画の概要や進捗、周辺の地価動向、そして投資判断で押さえておくべき視点を整理します。まずは事実をしっかり把握することから始めましょう。
代々木駅西口南地区の再開発とはどんな計画か
最初に押さえておきたいのは、代々木駅周辺で進む再開発の位置づけです。この計画は「代々木駅西口南地区第一種市街地再開発事業」と呼ばれており、再開発の商業コンサルタントであるAUC計画研究所の案件ページでも取り上げられています。同ページによれば発注者は株式会社フジタとされ、開業予定日は「未定」と記載されています。つまり、業界内では認知されているものの、確定したスケジュールが公表される段階には至っていません。
第一種市街地再開発事業とは、老朽化した建物や十分に活用されていない土地が集まるエリアを整備し、防災性の向上や土地の有効活用を図るための都市計画制度です。権利者が合意のうえで土地や建物を再開発組合に集約し、新しく建てるビルの床(権利床)として再配分される仕組みが一般的です。個々の地権者だけでは難しい大規模な開発も、この制度を使うことで実現しやすくなります。代々木駅前のように地権者が多く入り組んだエリアでは、こうした枠組みが欠かせません。
計画の中身については、地元向けの説明段階で示された案が参考になります。過去の説明会資料では、高さ150m級で、1〜7階を商業施設、8〜39階をファミリータイプのマンション約400戸とする構想が示されていました。駅前という好立地にこれほどの規模の建物が誕生すれば、街並みや周辺の不動産市場に与える影響は小さくありません。ただし、これらの数値はあくまで検討段階の内容であり、最新の確定値は各公的機関の公式発表でご確認いただく必要があります。
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着工・竣工はいつ?現時点での進捗状況
多くの方が最も気にするのは「いつ完成するのか」という点でしょう。しかし現時点では、着工・竣工時期はいずれも公表されていません。先述のAUC計画研究所の案件ページでも開業予定日は「未定」とされており、計画が話題になってから相応の年数が経過した今も、公式な確定スケジュールは明らかになっていない状況です。
準備組合が公開している最新の内容を見ると、代々木駅西口の再開発は「地区計画によるまちづくりのガイドラインの概要と今後の都市計画の手続き」について報告する段階にあると説明されています。地区計画とは、一定のエリアについて建物の用途や高さ、道路や広場の配置などのルールを定める都市計画の仕組みです。市街地再開発事業に先立って地区計画を整えることで、まち全体の方向性を共有しながら開発を進めやすくなります。
2021年頃に示された進め方の資料では、勉強会からオープンハウス、渋谷区への要望書提出、渋谷区主催の意見交換会を経て、法令に基づく都市計画手続きへ進むという流れが想定されていました。同じ資料の中では、駅前の一角を「市街地再開発事業の予定区域」と位置づけ、駅前広場や歩行者空間の整備を構想していた点も読み取れます。段階を踏んで合意形成を重ねる進め方であるため、時間がかかるのは自然なことといえます。
実際、2022年の説明段階では「8年後を目処に」といった長期スパンでの説明がなされていました。再開発が長期化する背景には、複数の地権者との合意形成や行政との都市計画手続き、資金調達など、クリアすべき課題が多いという事情があります。関係者が多いほど調整に時間を要する傾向があり、代々木駅西口南地区もこうした複合的な要因が絡んでいると考えられます。最新の確定スケジュールは、渋谷区や東京都の公式発表を継続的に確認することが欠かせません。
渋谷区の上位計画にみる代々木エリアの位置づけ
代々木駅前の再開発は、単独の建物計画としてだけでなく、渋谷区全体のまちづくりの文脈でも捉えると理解が深まります。渋谷区のまちづくりマスタープランでは、代々木駅周辺について、交通結節機能を持つ駅の利便性を生かした市街地の更新が進み、教育・文化、商業、業務、居住など多様な機能が集まる拠点が形成されていると位置づけています。つまり行政の側も、このエリアを更新すべき重点的な地域として認識しているわけです。
渋谷区の地区計画一覧には、神宮前や表参道、千駄ヶ谷五丁目北、神宮外苑などと並んで「新宿駅直近地区」も掲載されています。代々木エリアは新宿駅にほど近く、渋谷区・新宿区・東京都が連携して取り組む広域的なまちづくりの一翼を担う立地にあります。単独の再開発にとどまらず、より大きなスケールで街が変わっていく可能性を含んでいる点が、このエリアの特徴といえるでしょう。
交通インフラの整備も見逃せません。渋谷区の代々木地区駐車場整備計画は、令和3年3月5日に都市計画決定された「代々木駐車場整備地区(約44.2ha)」を対象としています。同計画では、地区内の大規模開発に伴って代々木駅・新宿駅周辺の将来の駐車需要が増えると予想する一方、施設内の附置義務駐車場が十分に使われず、コインパーキングへの需要が高いという現況も整理されています。開発の進展を見据えて、駐車のあり方を含めた基盤づくりが検討されているのです。
同計画では、代々木駅周辺は事務所と住宅が混在し、東西に通る補助57号線周辺には住商併用の施設も立地していると整理されています。住む場所と働く場所、そして商業が入り混じるこの複合性こそが、代々木という街の性格を形づくっています。再開発は、こうした既存のまちの文脈のうえに乗って進められていくものといえます。
代々木エリアの地価と賃貸需要の実態
投資判断のうえで重要なのは、再開発の期待とは切り離した「今の実力値」を把握することです。令和7年の地価公示では、代々木駅から150mほどの商業地(代々木1-57-4)が1㎡あたり5,440,000円、容積率600%で公示されています。この地点の鑑定評価書では、代々木駅を中心とした商業地域として「事務所需要は概ね安定的」とされ、需要者として収益物件を運用する投資家や開発を企図するディベロッパーが想定されていると記されています。
さらに同じ評価書では、事業系の投資用不動産の需要は良好で、地価は上昇傾向で推移していると評価されています。翌年の令和8年鑑定評価書に至っては、代々木駅周辺の繁華性の比較的高い商業地域で多方面の不動産需要が見られることから地価は上昇傾向にあるとされ、年間の変動率は+12.1%と示されています。数字が示すのは、再開発の完成を待たずとも、このエリアの土地価値がすでに堅調に伸びているという事実です。
交通の利便性も需要を下支えしています。都営大江戸線の代々木駅では、一日平均で相応の乗降利用があります。加えてJRや小田急線が集まる新宿駅、そして渋谷駅にも近く、複数路線を使える立地の良さは再開発の有無にかかわらず一定の需要を生みます。この立地本来の価値こそが、投資判断の土台になります。
周辺の再開発事例から読み取れる方向性
代々木駅前の再開発の行方を占ううえで、近隣で実際に完了・進行している事例が参考になります。近くの千駄ヶ谷五丁目北地区第一種市街地再開発事業は、東京都都市整備局の一覧で施行区域約0.5ha、令和1年に完了と整理されています。その計画規模は建築面積約2,500㎡、延べ約43,000㎡、高さはGL+90mで、主要用途は事務所・店舗・公益施設・駐車場、広場は約1,700㎡でした。都心の駅近くでは、こうした複合用途と公共空間を組み合わせた再開発が着実に形になっています。
より大型の動きとして、新宿駅西口地区の開発計画は2029年度の竣工を予定しており、駅とまちの連携を強化する重層的な歩行者ネットワークや、にぎわいと交流を生む滞留空間の整備を掲げています。代々木駅は新宿駅と隣接する位置にあるため、こうした大型開発の進展はエリア全体の回遊性や集客力を押し上げる要因になり得ます。周辺の動きと合わせて捉えることで、代々木の将来像がより立体的に見えてきます。
再開発エリアへの不動産投資で知っておくべきこと
再開発エリアへの不動産投資には独特の特性があります。重要なのは、再開発の「期待値」と「不確実性」を正しく理解したうえで判断することです。代々木駅前のように計画が進行中のエリアでは、完成後の地価や賃料の上昇を見込んで、早い段階で物件を取得しようとする投資家が増える傾向があります。
ただし、着工・竣工時期が未定の現状では、いつ恩恵を受けられるかが読めない点に注意が必要です。長期にわたって資金が拘束されるリスクや、計画の内容が変更される可能性も念頭に置きましょう。再開発計画はあくまで「計画」であり、公的機関による決定告示や認可を経て初めて確定していくものです。過去の説明資料に示された高さや戸数などの数値も、最新の確定値とは異なる可能性があるため、うのみにしない姿勢が大切です。
一方で、代々木という立地そのものの魅力は、再開発とは切り離して評価できます。すでに見たとおり、地価は上昇傾向にあり、投資家やディベロッパーからの需要も継続的に想定されています。複数路線が使える利便性の高さもあり、再開発の有無にかかわらず一定の賃貸需要が見込めるエリアです。再開発を「プラスアルファの期待値」として捉え、立地本来の価値を軸に投資判断を行うアプローチが、リスクを抑えるうえで有効といえます。
また、再開発エリアの情報は変化が早いため、最新の都市計画情報は渋谷区や東京都の公式サイトで直接確認することをおすすめします。地区計画の決定告示や事業計画の認可状況といった法定手続きの進み具合は、個別事情によって異なります。信頼できる一次情報を定期的に追いながら、長期的な視点で判断を積み重ねていくことが、後悔のない投資につながります。
まとめ
代々木駅西口南地区の再開発は、地元向けの説明段階で高さ150m級・地上39階規模のビル構想が示されてきた注目のプロジェクトですが、開業予定日は「未定」とされ、確定したスケジュールは公表されていません。現在は地区計画のガイドラインと今後の都市計画手続きを報告する段階にあり、渋谷区の上位計画でも代々木駅周辺は市街地更新を進める拠点として位置づけられています。
一方で、令和8年の鑑定評価で地価の年間変動率が+12.1%とされるなど、エリアの実力値そのものが堅調に伸びている点は見逃せません。不動産投資を検討する際は、再開発への期待だけでなく、立地本来の価値と不確実性を冷静に評価することが肝心です。最新情報は渋谷区や東京都の公式サイトで確認しながら、長期的な視点で判断していきましょう。
参考文献・出典
- 渋谷区ポータル(都市計画・市街地開発事業)— https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kankyo/toshikeikaku/toshikeikaku-jigyo/
- 渋谷区ポータル(地区計画制度)— https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kankyo/toshikeikaku/seido/tikukeikaku.html
- 東京都都市整備局(市街地再開発事業について)— https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/machizukuri/shigaichi_seibi/sai-kai/saikaihatsu
- 東京都交通局(代々木駅)— https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/subway/stations/yoyogi.html
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ(令和7年・令和8年鑑定評価書)— https://www.reinfolib.mlit.go.jp/landPrices_/realEstateAppraisalReport/2026/13/2026131130510.html
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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