かつて池袋の行政の中心だった旧豊島区役所は、今や街の顔とも言える文化・商業の拠点へと生まれ変わっています。「昔の区役所はどこにあったのか」「あの跡地は結局どうなったのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。この記事では、旧豊島区役所の歴史から新庁舎への移転、そして跡地に誕生した「Hareza池袋」までの流れを、公的機関の情報をもとにわかりやすく整理します。あわせて、池袋東口エリアの変貌が持つ意味も丁寧に解説します。
旧豊島区役所はどこにあったのか
まず押さえておきたいのは、旧豊島区役所が置かれていた場所です。豊島区の公式ホームページによると、区役所は池袋1丁目642番地、現在の東池袋1丁目18番1号にあたる旧東京府荒玉水道組合役場跡に開庁しました。池袋駅東口から歩いてすぐという立地で、長年にわたり区民生活を支える行政の中心地として機能してきたのです。
この場所は、戦争の影響も強く受けています。豊島区の年表によれば、1945年4月の空襲で罹災した際には、いったん立教中学校内に仮区役所が設けられました。戦後は南池袋公園の敷地内に仮庁舎を確保したうえで建替えが進められ、1961年7月に鉄筋の新しい庁舎が完成しています。木造の庁舎から本格的な庁舎へと移り変わった経緯からも、この土地が区の歩みと深く結びついてきたことがわかります。
都心の駅近に広大な公有地が存在するという条件は、跡地活用を考えるうえで大きな意味を持ちます。民間だけでは実現しにくい大規模な再開発が可能になるからです。豊島区はこの好立地を最大限に活かし、財政負担を抑えながら新庁舎を建設するという先進的な手法を選びました。その結果として生まれたのが、現在の池袋東口の姿です。
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財政負担ゼロで実現した新庁舎への移転
旧庁舎の建替えで特に注目されたのは、その資金調達の仕組みです。国土交通省の資料によると、築50年を超えた本庁舎は老朽化による安全面・防災面の不安から建替えが課題とされていました。そこで豊島区は、旧本庁舎敷地と分庁舎・公会堂敷地を定期借地権によって民間事業者に貸し付け、その地代から新庁舎の保留床購入費用を捻出するスキームを採用したのです。
定期借地権とは、あらかじめ決められた期間だけ土地を貸し借りする契約で、期間が終われば土地は地主のもとに戻ります。この仕組みを使うことで、区は貴重な公有地を手放さずに、民間の資金とノウハウを取り込んだ開発を進められました。同じ国交省の資料には「区の財政負担が実質なしで建替えが実現した」と明記されており、全国の自治体から注目される事例となっています。
こうした官民連携の手法は「PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)」と呼ばれ、財政が厳しい自治体にとって有効な選択肢とされています。実際に完成した建物は地上49階建て・全432邸の〈Brillia Tower 池袋〉で、区役所部分は建物の1階の一部と3階から9階に配置されました。1〜2階には商業施設などが入り、11階から49階には分譲マンションが整備されるという、公共と民間が一体となった複合施設になっています。新庁舎は2015年5月7日に開庁し、これをきっかけに旧庁舎跡地の本格的な活用がスタートしました。
Hareza池袋の誕生と旧庁舎跡地の変貌
移転後の旧庁舎跡地は、文化とにぎわいの発信地として再構築されました。豊島区の資料によると、庁舎と公会堂の跡地活用はプロポーザル方式で募集され、2015年3月に東京建物、サンケイビル、鹿島建設の3社による案が選定されています。対象となった敷地は、旧庁舎敷地が約3,619㎡、公会堂敷地が約2,983㎡でした。計画は8つの劇場と高規格の大規模オフィスを核とし、池袋の副都心機能を強化する構想として描かれました。
このエリアには、公募で選ばれた愛称が付けられています。中池袋公園や周辺区道、としま区民センターなどを含めて一体整備するにあたり、5,065件もの応募のなかから2017年3月に『Hareza(ハレザ)池袋』という愛称が決定しました。そして2020年7月にグランドオープンを迎え、としま区民センター、東京建物 Brillia HALL、オフィス棟のHareza Tower、中池袋公園を含む周辺一帯の総称として定着しています。
かつて区役所が建っていた東池袋1丁目18番1号には、現在Hareza Towerがそびえています。この建物は2020年5月に竣工した地上33階・地下2階、延床面積約68,600㎡のオフィス棟です。一方、旧豊島公会堂の跡地には東池袋1丁目19番1号の東京建物 Brillia HALLが整備され、客席数は1,248席の本格的な劇場となりました。行政の建物があった場所が、オフィスと劇場という新しい機能へと置き換わったことがよくわかります。
Hareza池袋のエントランスゲートとして位置づけられているのが、としま区民センターです。豊島区の公式情報によると、この施設は区民の多彩な自己表現の場や文化創造の拠点として新たに生まれ変わりました。多目的ホールなどを備え、区民が日常的に利用できる場として地域に根づいています。行政の場だったエリアが文化と交流の拠点へ転換したことは、池袋東口全体のイメージ向上にも大きく貢献しています。
跡地再開発が池袋の街全体に与えた影響
旧豊島区役所跡地の再開発は、単なる建物の建替えにとどまりませんでした。豊島区の資料では、区庁舎の移転をきっかけとしたHareza池袋の開発に加え、池袋駅西口での大型再開発、旧造幣局跡地でのまちづくりなど、池袋駅周辺で新たな都市再生の動きが活発化していると説明されています。跡地活用が、街全体の再編を促す起点になったといえるでしょう。
こうした動きに合わせて、交通環境の見直しも進められています。同じ資料では、池袋駅東口の駅前広場再編が検討課題として挙げられており、街の回遊性や利便性の向上が意識されています。ひとつの跡地活用が、周辺の道路や公園、駅前空間まで巻き込んだ広がりを持つプロジェクトへと発展してきたのです。
行政が主導する大規模な再開発は、民間単独の開発と比べて計画の継続性が高く、エリア全体の価値を底上げしやすいという特徴があります。旧庁舎跡地から始まった一連の整備は、まさにその好例といえます。中池袋公園を中心とした人の流れが生まれ、若い世代や来街者も集まる活気ある街へと変化してきました。こうした変化は、周辺の不動産価値にも少なからず影響を与えていると一般的には考えられています。
池袋エリアの不動産を見るときのポイント
旧豊島区役所跡地の歩みからわかるのは、池袋が長期的な視点で継続的に整備されているという事実です。行政の移転を起点に、劇場やオフィス、公園、駅前空間までが連動して再編されてきました。このような街づくりの背景を理解したうえで市場を見ると、エリアの将来像がつかみやすくなります。
一方で、再開発が進むエリアには注意すべき点もあります。工事期間中は騒音や人の流れの変化が生じますし、整備が完了して地価が上昇すれば、取得コストが高くなるという側面も出てきます。大切なのは、短期的な値上がり期待だけに目を向けず、賃貸需要の安定性や将来の人口動向まで含めた総合的な視点を持つことです。実際の効果や完成時期は計画通りに進まないこともあるため、最新情報は豊島区や東京都の公式サイトで継続的に確認するようにしましょう。
池袋は複数の路線が乗り入れる主要ターミナル駅で、交通利便性が非常に高いエリアです。この立地条件の強さは、再開発の有無にかかわらず長期的な需要を支える基盤となります。旧区役所跡地の変貌が象徴するように、街の魅力は行政と民間の連携によって着実に高まってきました。物件を検討する際は、こうした基礎的な立地条件と再開発の動向の両方を合わせて評価することをおすすめします。
まとめ
旧豊島区役所は、東池袋1丁目18番1号にあった行政の中心地で、戦災や老朽化を経て2015年5月に新庁舎へと移転しました。その建替えは定期借地権を活用した官民連携によって、財政負担を実質ゼロで実現した先進事例です。跡地は8つの劇場と大規模オフィスを核とした再開発を経て、2020年7月に『Hareza池袋』としてグランドオープンしました。かつて区役所が建っていた場所には現在Hareza Towerがそびえ、旧公会堂跡地には劇場が整備されています。この跡地活用は西口や旧造幣局跡地の再開発にもつながり、池袋全体の都市再生を後押ししています。街の動きを追う際は、必ず豊島区や東京都の公式サイトで最新情報を確認しながら、長期的な視点で判断することが大切です。
参考文献・出典
- 豊島区公式ホームページ「区の歴史・年表」 — https://www.city.toshima.lg.jp/012/kuse/gaiyo/000782.html
- 豊島区公式ホームページ「区政のあゆみ年表1932(昭和7)年~1988(昭和63)年」 — https://www.city.toshima.lg.jp/012/kuse/gaiyo/nenpyo/014190.html
- 豊島区「新庁舎整備推進計画」 — https://www.city.toshima.lg.jp/documents/3711/seibisuisinkeikaku_zenbun.pdf
- 国土交通省「コラム 官民連携によるPREを活用した区役所新庁舎の建替え(東京都豊島区)」 — https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/html/n1222c20.html
- 豊島区公式ホームページ「区政のあゆみ年表2009(平成21)年~2018(平成30)年」 — https://www.city.toshima.lg.jp/012/kuse/gaiyo/nenpyo/017934.html
- 豊島区公式ホームページ「豊島区景観資源」 — https://www.city.toshima.lg.jp/296/2311161414.html
- 豊島区公式ホームページ「としま区民センター」 — https://www.city.toshima.lg.jp/473/miryoku/shiru/kuyakusho/toshima-civic-center.html
- 豊島区公式ホームページ「池袋駅東口駅前広場再編」 — https://www.city.toshima.lg.jp/550/2503121314.html