不動産の税金

相続した実家を売却したときの税金を徹底解説

親が亡くなり、実家を相続したものの「このまま空き家にしておくのも不安だし、売却を考えているけれど、税金がどうなるのか全くわからない」という方は多いのではないでしょうか。不動産の売却には思わぬ税負担が生じることがあり、知らずに手続きを進めると後悔することにもなりかねません。この記事では、相続した実家を売却したときにかかる税金の仕組みから、税負担を大きく減らせる特例まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。手続きの流れや注意点も丁寧にお伝えしますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

相続した実家を売ると「譲渡所得税」がかかる

相続した実家を売ると「譲渡所得税」がかかるのイメージ

まず押さえておきたいのは、相続した実家を売って利益が出た場合、「譲渡所得税」という税金が発生するという点です。これは給与所得などとは別に計算される「分離課税」という仕組みで、国税庁の説明によると「土地や建物の譲渡による所得は、他の所得と合計せず、分離して計算する」とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm)。

譲渡所得の計算式は、「譲渡価額(売却金額)から取得費と譲渡費用と特別控除額を差し引いた金額」が課税対象となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)。取得費とは、もともとその不動産を購入したときの代金や手数料のことです。譲渡費用とは、売却のために直接かかった費用を指し、仲介手数料・測量費・売買契約書の印紙代・建物の取壊し費用なども含まれます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)。

税率は、売った年の1月1日時点での所有期間によって大きく変わります。所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」の場合は所得税15%・住民税5%、5年以下の「短期譲渡所得」の場合は所得税30%・住民税9%が基本税率となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm)。短期と長期では税率が倍近く異なるため、売却のタイミングは非常に重要です。

相続した不動産の「取得費」と「所有期間」の考え方

相続した不動産の「取得費」と「所有期間」の考え方のイメージ

相続した不動産には、取得費と所有期間の計算に独自のルールがあります。ここを正しく理解しておかないと、税額の見積もりが大きくずれてしまうことがあります。

所有期間については、相続で取得した場合は「被相続人(亡くなった方)が取得した時期をそのまま引き継ぐ」というルールがあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)。たとえば、親が30年前に購入した実家を相続した場合、相続してから数か月しか経っていなくても、所有期間は30年以上として長期譲渡所得の税率が適用されます。これは相続人にとって有利なルールといえます。

取得費についても同様に、被相続人が購入したときの代金や手数料などをもとに計算します(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)。また、業務用でない不動産を相続した際に相続人が支払った登記費用や不動産取得税も取得費に含めることができます。さらに、相続税が課税されていた場合は、後述する「取得費加算の特例」によって相続税額の一部を取得費に上乗せできる制度もあります。

注意が必要なのは、親が昔に購入した物件で購入時の書類が残っていないケースです。取得費が不明な場合や、実際の取得費が売却金額の5%未満の場合は、売却金額の5%を「概算取得費」として使うことができます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)。ただし、概算取得費を使う場合は、相続人が支払った登記費用などを別途取得費に加えることはできない点に注意が必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)。

税負担を大幅に減らせる「空き家特例」とは

相続した実家の売却で最も注目すべき制度が、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、通称「空き家特例」です。この特例を使うと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるため、税負担を大きく抑えられる可能性があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。

ただし、この特例には細かな要件があります。まず対象となる家屋は、相続開始直前に被相続人が住んでいた家屋で、昭和56年5月31日以前に建築されたもの、区分所有建物(マンション等)でないもの、被相続人以外に居住者がいなかったもの、という3つの条件をすべて満たす必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。なお、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になり得ます。

売却の条件としては、相続後から売却まで事業用・貸付用・居住用に使っていないこと、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であること、などが必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。また、令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は、控除上限が2,000万円に変わります。

さらに、空き家特例と「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」は併用できない点も重要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。どちらの特例が有利かは個別の状況によって異なるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

「取得費加算の特例」も見逃せない節税策

空き家特例と並んで知っておきたいのが、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」です。これは、相続税が課税された財産を一定期間内に売却した場合に、支払った相続税額のうち一定金額を取得費に加算できるという制度です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)。

この特例を使うには、相続や遺贈で財産を取得した者であること、その財産に相続税が課税されていること、そして「相続開始の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に譲渡していること、という3つの要件をすべて満たす必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)。相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内が一般的ですが、個別の状況によって異なりますので、詳細は税務署や税理士にご確認ください。

取得費加算の特例は、相続税の負担が大きかった方にとって特に効果的な制度です。一方で、先述のとおり空き家特例との併用はできないため、どちらの特例を選ぶかを慎重に比較検討することが大切です。売却価格や相続税額、物件の状況などを総合的に考慮して判断するようにしましょう。

申告の流れと手続きで注意すべきポイント

相続した実家を売却した場合、確定申告が必要になります。申告期限は、売却した年の翌年2月16日から3月15日までです(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm)。この期限を過ぎると延滞税などのペナルティが生じる場合があるため、早めに準備を進めることが重要です。

空き家特例を申告する際には、譲渡所得の内訳書、売却した不動産の登記事項証明書、そして家屋所在地の市区町村から交付を受ける「被相続人居住用家屋等確認書」などの書類が必要になります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。確認書の申請には、電気・水道・ガスの使用中止日が確認できる書類や、宅建業者が「現況空き家」と表示した広告なども必要になる場合があります(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/common/001396932.pdf)。

国土交通省の資料では、確認書の申請に必要な書類の中には「相続後や家屋・敷地の譲渡後に入手が難しいものもある」として、特例の適用を検討する段階で早めに準備するよう案内しています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/common/001396932.pdf)。実家の売却を検討し始めた時点から、必要書類の収集を始めておくことが賢明です。

また、相続による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額に1,000分の4を掛けて計算します(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)。売買契約書には印紙税もかかり、契約金額によって税額が異なります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7101.htm)。こうした諸費用も含めて、売却後の手取り額を事前にシミュレーションしておくと安心です。

まとめ

相続した実家の売却には、譲渡所得税をはじめとするさまざまな税金が関わります。しかし、空き家特例や取得費加算の特例を正しく活用することで、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。特に空き家特例は最高3,000万円の控除が受けられる強力な制度ですが、要件が細かく、申告に必要な書類の準備も早めに始める必要があります。まずは売却を検討し始めた段階で、税理士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。正しい知識と早めの準備が、相続した実家の売却を成功させる最大のポイントです。

参考文献・出典

  • 国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm
  • 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  • 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
  • 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
  • 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
  • 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国税庁 No.3102 譲渡所得の申告期限 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm
  • 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
  • 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
  • 国税庁 No.7101 不動産の譲渡・土地の賃貸借等に関する契約書 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7101.htm
  • 国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除) — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html
  • 国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置(説明資料) — https://www.mlit.go.jp/common/001396932.pdf

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